『ザ・フード・ラボ : 料理は科学だ』

作成者
J.ケンジ・ロペス=アルト著・写真 ; 上川典子訳
出版者
岩崎書店
刊年
2017.9

 「料理とは何か」
 この問いに皆さまはどのように答えられるでしょうか。文化?愛情?労働?
 マサチューセッツ工科大学卒業の科学者にして、シェフである本書の著者は「料理すなわち加熱とはエネルギーの移動」であり「熱を加えることにより分子構造を変化させ、化学反応を促して味や食感を変化させること」であると答えています。
 本書を開くと、レシピ本であるはずなのに、まるで化学や物理の教科書のようにグラフなどの図が多用され、「比熱容量」「不和分子」といった科学用語が羅列する文章が続いています。本書はおいしさを科学的根拠に基づいて追及するレシピ本なのです。
 例えば「ゆで卵」の章では、白身は完全に固まっているが中の黄身はやわらかく、カスタードクリームのように流れ出す「完璧な」半熟卵を作るとき、絶対に失敗しない作り方の一例として「湯をぴったり77℃に保つ」という方法が紹介されています。実際に料理をする際に本書のレシピ通り忠実に作業することは難しいかもしれません。しかし、本書に書かれていることを頭の隅に置いておけば科学的根拠に基づいて、いつもよりおいしい料理ができることでしょう。オールカラーの美しい本で科学読み物としても楽しめます。