『土偶界へようこそ : 縄文の美の宇宙』

作成者

譽田 亜紀子 著

出版者

山川出版社

刊年

2017.6

  ずんぐりした体形、不思議な文様、怪しげな表情・・・土偶と聞いて思い浮かべるのはこのような土の人形ではないでしょうか。その不思議な形態から宇宙人の姿を現したものでは?という珍説まで出てくるなど、土偶は謎に満ちた存在です。本書は土偶70体を取り上げて、カラー写真とともに紹介した図書です。
  土偶はおおむね妊娠した女性をかたどった焼き物の人形で、豊穣や子孫繁栄の願いが込められている、あるいは病気治癒のまじないのために作られたと考えられています。一口に土偶と呼んでいますが、図書を見てみると、遮光器土偶のように緻密な文様が施されたものがあるかと思えば、手を抜いて作ったのではと疑いたくなるようなゆるい造形のものまで様々なバリエーションがあり「こんな土偶があるのか」あるいは「こんなのでいいの」と感心するものばかりです。著者によれば一体一体の土偶に地域性や時代性が表われており、それらを訪ねることでゆるやかな土偶の世界を体感することができるといいます(著者はこの世界を「土偶界」と呼んでいます)。そんな土偶の世界をより体感できるように、本書は土偶の後ろ姿や上から見た写真も載せられているのもこの本の魅力です。「この土偶ってこんなに薄かったの?」「こんなところに穴が開いているなんて知らなかった」など、知らなかった事実が発見できるかもしれません。また、考古学に興味が無くても、何とも言えない表情に癒されたり、艶めいた後ろ姿にドキッとしたりと、キャラクター本としても楽しめます。本書は、縄文時代のゆるキャラ図鑑といえる一冊です。
  縄文人の美的センスや文化に思いを馳せつつ、気軽に読んでみてください。