『苔三昧 : モコモコ・うるうる・寺めぐり』

作成者

大石善隆著

出版者

岩波書店

刊年

2015.3

我が君は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで

これは日本の国家の歌詞にもなっている『古今和歌集』に収録された和歌です。「年月を経て小石が岩になり、その岩に苔がむすくらいの長きにわたって、我が君が健やかであられますように」といった意味です。この他にも、『万葉集』や『古今和歌集』をはじめとする古代の和歌集には苔が登場する和歌が収められています。これは日本の風土における苔の豊かさ、さらには古くから日本の文化に苔が根付いていたことを物語っています。
本書はこの苔についての入門書ともいえる1冊です。世界には約18,000種の苔が生育しているといわれており、日本にはその1割近い1,670種ほどの苔が生育しているそうです。地球の陸地面積の1パーセントにも満たない国土で、これほどまでの苔がみられるのは日本の気候・風土が育んだものに他なりません。
なかでもお寺の庭は苔の宝庫で、京都の西芳寺は「苔寺」として有名です。庭園内を様々な種類の苔が覆いまるで緑の絨毯を敷き詰めたかのようで、秋には紅葉と苔の対比が美しく、木漏れ日が差し込んだ苔庭はまるでライトアップされているかのようだと著者は評します。さらに本書では、全国70の苔庭とともに、約40種の苔たちの個性豊かな姿を知ることができ、どの庭園も苔が情緒ある風情をより一層演出しています。ちなみに奈良県内では、唐招提寺・依水園・吉城園の庭園が紹介されています。
「苔」と一言で言っても種類は多種多様です。ふわふわマットのヒノキゴケ、白いクッションのシラガゴケ類、透き通るようなみずみずしさのコツボゴケと形容されるように見た目もさまざま、また土の上に生えるケヘチマゴケ、石の上に生えるギンゴケ、木の幹に生えるキヨスミイトゴケ、水辺に生えるアオハイゴケと群生する場所もいろいろです。
本書を参考にお気に入りの苔探しをするのも一興、苔の奥深い魅力にはまる1冊です。