『延遼館の時代 : 明治ニッポンおもてなし事始め』

作成者
東京都公文書館編
出版者
東京都(東京都公文書館)
刊年
2016.3

 リオオリンピック・パラリンピックが終わり、いよいよ4年後は東京の出番となります。
 オリンピック招致で滝川クリステルさんにより一躍有名になった日本の「お・も・て・な・し」。世界中から観戦に訪れる人々は日本の奥ゆかしい文化に触れられると期待しているのではないでしょうか。そんな東京五輪で海外要人をもてなす施設として、東京都中央区の浜離宮庭園に「延遼館」が復元されるのをみなさんはご存知ですか?
 「延遼館」は、英国王子エディンバラ公が国賓として来日(明治2年7月)するにあたり明治政府が近代国家としての存立をかけ設けた迎賓施設で、明治初期、数々の国家的行事の舞台となりました。本書では、東京都公文書館がさまざまな歴史資料を調査し、これまであまり解明されていなかった「延遼館」の歴史を200点近くの写や画などの図版とともに紹介しています。建設当初、「延遼館」は幕府が「海軍所」として計画しましたが、完成時には幕府自体が崩壊していました。新政府が国賓接遇という大仕事に際し、これを「延遼館」に修築しました。外観は洋風ですが、内装は日本伝統工芸の粋を極めた装飾であったようです。ここで繰り広げられたおもてなし外交は、幕末結んだ不平等条約の改正や近代国家日本のアピールに重要な役割を果たしました。ときの外国官長官であった町田久成は「相当の礼節を尽くし恥辱を海外に流さない様厚く取り扱う」決意を文書に残しています。明治ニッポン初のおもてなしをうけたエディンバラ公はたいそう感激し帰国したそうです。その後日本は近代文明国の仲間入りを果たしていきます。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック、見事に成功させ平成ニッポンの素晴らしさを世界にアピールしたいですね。そのキーワードである「お・も・て・な・し」を明治の歴史から学べる一冊です。