『ミッフィーの食卓 : なにを食べているの?』

作成者
林綾野著
出版者
講談社
刊年
2016.2

 本書はオランダの絵本作家デッィク・ブルーナ氏の代表作『ちいさなうさこちゃん』(原書名:nijntje)シリーズに描かれている食風景からオランダの食生活を紹介するものです。『ちいさなうさこちゃん』はイギリス名の『ミッフィー』の方でご存知の方も多いかもしれません。
 本書の中にとりあげられている作品で当館でも所蔵している『ミッフィーのたのしいテント』にはミッフィーがお母さんに作ってもらったサンドイッチを食べる場面が登場します。オランダはカルヴァン派の流れをくむプロテスタントが多く、衣食を質素にする伝統があり、また、酪農が盛んでチーズやバターなど乳製品の製造が古くからおこなわれてきました。そのようなオランダの食生活の特徴は質の良い素材を生かした家庭料理です。パンにチーズなどをはさんだオランダ風サンドイッチはブローチェと呼ばれオランダでよく食べられているものの一つだそうです。
 著者は画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食の嗜好などを研究・紹介し新しい美術作品との出会いを提案するキュレーターです。私たちの「ミッフィーは何を食べているの?」という疑問に対して絵本の中にある「食」を丹念に追っていくことによりオランダの食文化が垣間見え、デッィク・ブルーナ氏が作り出す絵本の世界がより身近に感じられることを教えてくれています。
 オランダで第1作『ナインチェ』が出版されたのは1955年です。それから60年以上世界中で愛され続けている絵本の新たな魅力を気づかせてくれる一冊です。