『つくられる偽りの記憶 : あなたの思い出は本物か?』

作成者

越智啓太著

出版者

化学同人

刊年

2014.11

私たちはたくさんの思い出を胸に日々をすごしています。郷愁に包まれた幼き日々の思い出や青春の甘酸っぱい(あるいはほろ苦い?)思い出など、我々の人生は思い出とともにあると言えるでしょう。しかし、これらの思い出はすべて本物なのでしょうか。暗記した数式や難解な漢字の記憶ならばともかくとして、自分の思い出を疑う人はまずいないと思いますが、最近の認知心理学研究は記憶の不正確、さらには事実無根の記憶がつくられることを明らかにしつつあるようです。
今回紹介する図書は実際にあった記憶にまつわる事件などを例に挙げ、認知心理学の見地から解説したものです。このように書くとずいぶん難解に感じますが、取り上げられているのは、犯罪の目撃証言の確証性や前世の記憶について、さらにはエイリアンに誘拐された話(!)など、ずいぶんと突飛な事例です。しかし、これらの事例を頭ごなしに「ばかげたこと」として否定するのではなく、なぜそのような記憶がつくられたのかを丁寧に説明しており、心理学に疎い人にもわかりやすい内容になっています。
著者の越智氏は心理学の犯罪捜査への応用を専門とする大学教授であり、記憶証言についてのスペシャリストです。また、映画マニアでもあるとのことであり、本文中にはコラムとして記憶の謎をテーマにした映画も紹介されています。本書は認知心理学に興味を持つきっかけとなる図書といえるでしょう。
心理学に興味のある人からエイリアンに誘拐された人まで、どなたでも楽しめる一冊です。