『三輪氏 : 大物主神の祭祀者 』(古代氏族の研究7)

作成者

宝賀寿男著

出版者

青垣出版

刊年

2015.8

奈良盆地の南西部に位置する三輪山は円錐形の秀麗な姿をたたえた神奈備山で、ご祭神の大物主大神(おおものぬしのおおかみ)を鎮めています。山麓には大神神社(おおみわじんじゃ)があり、本殿を設けず拝殿の奥にある三ツ鳥居を通し三輪山を拝するというかなり古い時代の祭祀形態をとり、我が国でも最古級の神社だそうです。この神社は、古来より大和国の一之宮と
して、また医薬や酒造り、厄除けの神様として人々の篤い信仰をあつめてきました。お正月には夜半から催される「繞道祭」(にょうどうさい 「ご神火まつり」とも称される)などの祭事が続き、多くの参拝者でにぎわいます。
この三輪山を祭祀するとともに大物主神の後裔という系譜をもつのが三輪氏という氏族でした。日本家系図学会会長で家系研究協議会会長の要職を務める著者は、長年古代氏族の研究に取り組み、研究成果は「古代氏族の研究」シリーズとして上梓し、今回は三輪氏を取り上げています。 
著者によると、大神神社や三輪山の祭祀関係の著作は多いが、三輪氏族に関しての総合的な研究が現在まで疎かにされすぎていたということで、そのような思いから本書では上古部分の史料はきわめて乏しいが、その史料を丁寧に検証し、最近の遺跡や考古遺物の発掘成果も手がかりにして三輪氏の実像に総合的なアプローチで迫っています。
研究を通して著者は、三輪氏族が歴史に登場した初期段階では、初期大和王権の政治や祭祀と密接に関連していたと述べ、7世紀の天武朝には朝臣姓への改賜姓の時に氏族の筆頭にあげられ、持統期において先祖の墓記を上進させたときにも第一位に挙げられていると記しています。
著者はその後の氏族が辿った経緯についても文献や史料に基づき解説しています。本文は、各種の煩雑な系図や史料を丹念に紐解き注意深く検証を重ねて解釈と解説を行っているため、少々読みづらいところもありますが、著者が提示する三輪氏像は大変興味深く読むことができます。