『なぜ理系に進む女性は少ないのか? トップ研究者による15の論争』

作成者
S・J・セシ、W・M・ウィリアムス編、大隅典子訳
出版者
西村書店
刊年
2013.6

  先日、今年のノーベル賞受賞者の発表が行われました。ノーベル賞は理系分野での受賞が多く、受賞者は女性より男性のほうが圧倒的に多くなってい ます。残念ながら日本でもまだ女性の受賞者はおらず、安倍政権が打ち出した成長戦略「女性の活用」でも、「日本人女性のノーベル賞受賞者の誕生を 目指す」を掲げています。   最近では、理系分野に進む女子学生のことを親しみを込めて「リケジョ」と呼ぶなど、以前に比べると理系への進学者は多くなってきてはいるようで すが、まだまだ男性に比べると理系研究者は少ないのが現状です。
  ではなぜ理系分野に進む女性が少ないのでしょうか。
  この問いは世界共通のようで、英米の専門家たちがこの質問に対して科学的に述べている1冊が本書です。
  理系分野に女性が少ないのは能力が低いから? 興味関心が低いから? 歴史、文化のせい? 社会制度が女性を拒んでいる? 理系分野に女性が少 ない原因と結果について、あらゆる角度から独自の見解が述べられています。
  本書の「はじめに」で著者は「感情、修辞法、政治は排除し、認知的能力におけるジェンダー差とその起源の根底をなす、厳然たる科学を探求し、そ の過程において無数の非認知的影響について立ち向かう」と述べています。 そして我々読者には「初めに持っている偏見を除き、生物学的、文化的根拠に基づく理解を得てほしい」としています。
  本著は読みやすくわかりやすい文体で書かれており、かつて理系分野に手こずらされ、縁遠くなってしまった文系の方にも読み物として興味深く読み 進めてもらうことができます。この1冊が未来の日本人初女性ノーベル賞受賞者誕生の一助になるかもしれません。