『ロシアの挿絵とおとぎ話の世界』

作成者
海野弘解説・監修
出版者
パイインターナショナル
刊年
2013.1

  この本の表紙の美しさに惹かれて、つい手にとってしまいました。ロシアの挿絵とおとぎ話にどんな関係があるのか興味も湧き、読み進めていくと、 ロシアの民話は、19世紀に入り、プーシキン、ゴーゴリ、トルストイなどに語り継がれ、その後、ロシア民話の採集や研究が本格的になっていったようです。
  1898年に発行された芸術雑誌『芸術世界』は、ロシアのグラフィック・デザインに革命をもたらし、19世紀末から20世紀初めの挿絵の黄金時代を開幕させました。
  ロシアを代表する作家のアレクサンドル・プーシキンの創作した民話は、ロシアの近代文学、そして近代美術、さらに、近代音楽の新しい世界を開き、 ロシアの世紀末<銀の時代>に導きました。そして、雑誌『芸術世界』に集まった画家たちは、挿絵を描くことでプーシキンの作品を視覚化しました。 代表的画家がイワン・ビリービンです。プーシキンといえば、ビリービンを思い浮かべるほど、お話と挿絵がマッチしています。第1章に代表的な「サ ルタル王物語」「金のにわとりの物語」が紹介されています。この他にロシアのおとぎ話で有名な動物の話で「3びきのくま」や本書の表紙になってい る「ねことおんどりときつね」などが紹介されています。
  本書は、豊富な挿絵と代表的なおとぎ話が採録されておりますが、作者と挿絵画家との関係を紹介するとともにと、ロシア・アヴァンギャルドの時代 から現代に至るまでの近現代の美術通史として楽しむこともできる1冊です。また、本書中にあるロシアおとぎ話のキャラクター図鑑には、ロシアのおと ぎ話によく登場する主人公達が紹介されており、魅力的な主人公と出会うことができます。
  最後に20世紀初頭の<挿絵の黄金時代>と呼ばれた時代の挿絵画家を著者が紹介した資料が3冊あります。ロシア以外の挿絵も楽しめるので、是非、 ご一読ください。