『「眠り」をめぐるミステリー:睡眠の不思議から脳を読み解く(NHK出版新書372)』

作成者
櫻井武著
出版者
NHK出版
刊年
2012.2

  皆さんはご自分の睡眠に満足されていますか?   睡眠時間が1日平均6~8時間だとすると、人生のうちの4分の1から3分の1を占めていることになりますが、質・量ともに満足しているという方 は少ないのではないでしょうか。日本では、5人に1人が睡眠になんらかの問題を抱えているそうです。
  本書では、まったく眠ることができなくなる遺伝病や、眠りながら殺人を犯した夢遊病の事例など、眠りにかかわる不思議な生理現象や症例を通し、 最新の脳科学の観点から我々が生きる上で不可欠な“睡眠”の謎を解き明かしていきます。
  テスト前に一夜漬けというのはよく聞きますが、実は、睡眠中に「記憶が強化される」ことがさまざまな実験で確かめられているそうです。「眠り」 は休んでいる、という消極的な状態ではなく、積極的に脳のメンテナンスと情報処理を行う能動的な過程だというのです。その働きはパソコンのデフラ グメンテーション操作に例えられています。
  他にも、ネガティブな感情に対する記憶は睡眠不足でもそれほど影響は受けないけれど、睡眠をとると、ポジティブな感情に関する記憶が、ネガティ ブな記憶に比べてよく残るという研究もあるそうです。つまり、よく寝ないと嫌な思い出ばかりが残り、楽しい思い出や、学習効果があまり残らないと いうことなのです。
  多忙な現代人にとって、ついついおろそかになりがちな睡眠ですが、ぜひ本書を読んで睡眠の大切さを再認識してください。