書誌データベースの構築に向けて 
−遡及入力の現状(5) レコード修正について−


奈良図書館の目録サービスは、全蔵書へのアクセスを可能とするオンライン目録(OPAC)で公開されている。カードや冊子目録を引いていた頃に比べると、著者名からはその著者の全書誌が見られるし、必要な件名から関連する主題の書誌が出てくる。ジャンプしながら次々と新しい展開が始まり、上手に検索すれば思わぬ情報を拾い出すことも珍しくない。それだけに提供する書誌情報の質を保持する責任は重い。
 五ヵ年計画で進めてきた奈良・橿原図書館所蔵資料のデータベース化も一段落し、その概要は本誌「うんてい」67号,69号〜71号に掲載されている。本年度(2000年度)の作業は、入力済みデータの確認や修正を中心に進めた。図書データを中心にその作業を振り返ってみることとする。
 多かったのは資料IDの単純な入力ミスである。所蔵データとしては、資料ID,請求記号,所在情報があるが、この部分の間違いは、現物が見つからないという事態にもなりかねず、修正作業は1件ごとに現物と確認しながら確実に行った。それでも単純な数字の入力ミスは起こる。所蔵データの修正はかなり済んでいるものの早急に未修正分の対策が必要である。
 書誌データについては、重複レコード作成による修正が目立って多い。ヨミの誤りや分かち書きが異なるため重複となっているもの。タイトルが同じであるのに単冊ごとに別レコードのあるものや、部編名が副書名扱いとなっているものなど、書名に関するもの。出版年の相違では版と刷の混同による重複も多かった。この他に著者典拠レコード(1)の重複や書誌構造リンク(2)の間違いは、修正すべきレコードが芋蔓式に出てきて慌てる。
 逐次刊行物など多巻ものの重複修正は、現物の確認だけでもかなりの労力がいる。寄贈受入れも多くマニュアルどおり市販版とは別に作成しているのにISBNや値段が入力されて、市販版の重複になってしまったり、中には全く別のレコードに替わっているのもあった。
 当館のデータベース構築は、国立情報学研究所(NII/旧称学術情報センター)の目録システムNACSIS-CAT(NC)を利用している。NCは、″1書誌1レコード″の原則のもとにデータベースが作成、維持されていて、参加館は所蔵を登録する際、
レコードの同定と、NCのマニュアルどおり作成されているかどうかを確かめながら登録する。このことが時として抜け落ちるのか、多数の参加館がすでに所蔵登録をしてしまったレコードの修正をするはめになったり、付替え依頼の連絡中のレコードに、新たに所蔵が加えられることも起こる。NCの重複付替えの原則は、先に登録されたレコードが優先される。決して正しいレコードに付替えるわけではない。この事が案外守られていないために、重複修正がより困難となっているレコードもある。1館で処理できないときは、NIIまで調整依頼の報告をする。
 NIIでは、20008月から「目録情報に関する質問書/回答書データベース」が開始されブラウザから報告や要望、質問を送ることが可能となった。検索画面「Q&A DB」でNIIに寄せられた質問/回答を見ることができて大変便利になっている。NCに格納されている参照ファイルも増え、ドイツ国立図書館作成のDNMARC(DN)も利用できる。多言語対応システムも開始されておりCHINA-MARCからの中国語図書のデータベース化も可能となる。ただ便利ではあるが参照ファイルからの入力は、そのまま流用されている例が多く、重複レコード作成の一因にもなっているようである。
 遡及変換データ入力作業は、スタッフ全員が兼務で通常業務に忙殺され、アルバイトの能力の限界を危惧しながら一任せざるを得なかった。もちろんNCにデータがあればアルバイトでも支障なく、マニュアルをしっかり守るという指導が徹底されていれば、オリジナル入力も和書のほとんどが可能である。データの正確性を保つために、質問や不明なことは記録をとって十分な指導をするとか、チェック体制を強化するなど反省すべきことも多かった。今後の作業に生かしたい。
 最後に本年度の成果として200010月に雑誌書誌レコードの所蔵をNCへ一括登録したことを挙げておく。ただし郷土資料は除いた。

 (注1)著者標目にあたるレコードで、書誌レコードとは別のファイルに収録されていて、リンクによって結びついている。

 (2)シリーズや全集のタイトルに対応するレコードが、個々の書誌レコードとリンクによって結びついている。

(菊井 直子)

|目次に戻る| |次へ|


奈良県立奈良図書館「芸亭」