進学先としての軍隊 〜陸軍士官学校、海軍兵学校

戦前の社会では、義務教育である小学校尋常科を終えると、恵まれた環境にある男性の場合、5年制の旧制中学校へ進みました。旧制中学で修学すれば、その後もさまざまな進路を選ぶことが可能でした。旧制高校を経て帝国大学というコースは著名ですが、他にも私立大学の予科から本科に進むコースもあり、また教師志望者は師範学校に入学することも可能でした。陸軍士官学校や海軍兵学校に入り陸海軍の将校になるのも、そうした選択肢のひとつでした。広田照幸『陸軍将校の教育社会史』(世織書房、1997)によれば、こうした軍学校へ進学率は地域性があり、入学試験の難易度は軍縮期には比較的易しくなるなど世相を反映していたといいます。

将校養成制度は何度か制度の変遷を経ていますが、昭和期の場合だと、陸軍はまず2年間陸軍予科士官学校(当初東京市谷のち埼玉県朝霞に移転)で学び、半年間下士官として部隊勤務を経た後、約2年弱陸軍士官学校(東京市谷)を修了し見習士官として任官します。海軍の場合は、海軍兵学校(広島県江田島)で3年半修学の後、少尉候補生に任官されます。そして、徴兵や志願兵として軍隊に入った兵士たちと同年代でありながら、彼らを指揮する立場に立つことになります。

職業として陸海軍の将校を見た場合、官吏や民間会社のホワイトカラーと比較して、高い勲位が得られる一方で、昇進しなければ若くして予備役編入(失職)を余儀なくされる心配がありました。

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