レファレンス・あれこれ (15)

 
 
閲 覧 室
 


Q  聴導犬について知りたい

A  聴導犬は耳の不自由な方やお年寄りと生活を共にして、耳のかわりとなる犬のことで、最近は一般に知られるようになりました。しかし、聴導犬について書かれたものは多くはありません。当館所蔵のものでは「ちょうどうけんドラゴン」(国際プレスセンタ− 1986)、「聴導犬シンディ誕生物語」(小学館 1998)などの児童書があり、いずれも聴覚障害者の支えとなって一緒に暮らす聴導犬のルポルタ−ジュを中心に、子ども向けに解説がされています。もう少し広がりのある情報を得るために、インタ−ネットを“聴導犬”のキ−ワ−ドで検索すると、いくつかのホ−ムペ−ジにアクセスすることができ、聴導犬についての紹介、訓練のようす、関係団体の活動とその連絡先などを知ることができます。「ジャパン聴導犬協会」「ヒアリングドッグを育てる会」などのホ−ムペ−ジによれば、聴導犬は1975年アメリカでヒアリングドッグとして開発され、盲導犬や車椅子の介護犬とともに市民権を得て、公共の乗り物に乗ることも認められているということです。日本では1981年(国際障害者年)頃から始められたようですが、現在国内の聴導犬は10頭にならないということです。
 聴導犬の仕事は、火災報知機や非常ベルの異常音、ドアのノックやチャイムの音、目ざまし時計の音、赤ちゃんの泣き声、電話、FAXの受信を知らせ受信票を運ぶなどの家の中の音を聞き分け知らせるほか、道路上で自動車のクラクションや自転車のベルの音を主人に知らせ、誘導することです。その育成活動は市民団体が中心となっています。
 ホ−ムペ−ジから関連するリンクをたどれば、盲導犬、介助犬、災害救助犬などについても情報を得ることができます。

(井上  はるみ)

 
児 童 室
 



Q 世界の国について、いろいろ調べたい。 

A   一年を通してよく聞かれることがらです。
 ひとつの国を調べるにも、どの国のどういうことを調べるのかによって、資料も当然異なってきます。歴史についてか、地理的なことか、文化事情を知りたいのか、逆にこちらから尋ねますが、小学校の中学年では文化事情を、高学年では歴史やその国に関する統計資料を調べるケースが多いようです。今回は、各国の文化事情に関する本を紹介しましょう。
 まず、その国のひとりの子どもと、その家族の生活を紹介するなかで、その国の社会や文化を見ていこうというつくりになっている『世界の子どもたち』(偕成社刊 35巻)や、国際交流の視点から、各国の衣食住や子どもの生活を紹介した『きみにもできる国際交流』(偕成社 現在刊行中)があります。『きみにも…』はアジアの国から刊行されていますので、『世界の…』と組み合わせて使うと、調べる国の幅が広がります。また地理的には近いのに、なぜか遠い存在だったアジアについて考えようという『アジアを考える本』(岩崎書店 全7巻)も、見てほしい資料の一つです。おもしろいところでは、「あなたの家の中の物を全部家の前に出して写真を撮らせてください。」という奇想天外な企画で、30か国の家族とその生活を紹介した『地球家族』(ピーター・メンツェエル著TOTO出版)や、特派員の目から世界を紹介した『特派員からのメッセージ』(岩尾祐二編著 ブリオ出版)、世界各国の家と街の写真集『地球生活記』(小松義夫著 福音館書店)などもあります。多くの本には統計資料もついています。
 是非一度、手にとって見てください。

                             (小西  雅子)

 
郷土資料室
 



Q奈良町界隈の「辻」の名称について

  一般的に「辻」(つじ)とは、道路が交差するところ、「四つ辻」を意味しますが、旧奈良町界隈で特徴的なのは、「辻」よりもむしろ「辻子」(づし)という地名が多いことでしょう。
 文献で「辻」のつく地名をあげてみますと、
  @「奈良曝」(貞享4年)
     四ノ室ノ辻子(餅飯殿の近く)・木辻町・南風呂ノ辻子・北風呂ノ辻子・狐が辻子(中ノ新屋町の近く)・辰巳ノ辻子(元興寺町の近く)、中辻町・不審辻子・百萬辻子町(林小路町の近く)今辻子・柴辻町・奥芝辻町   計12か所
  A「奈良坊目拙解」(享保20年)
     白山辻子町(鳴川町の近く)・木辻町・中辻町・木辻村中町・不審辻子町・開之辻子町(高畑高井町の近く)・奥之辻子町・辻之浦町・今辻子町百萬辻子町・芝辻町・奥芝辻町    計12か所   
   B「大和国町村誌集」(明治24年)
      不審ヶ辻子・中辻・西木辻・東木辻・今辻子芝辻・百万ヶ辻子   計7か所
   C 現行地名
      西木辻町・東木辻町・中辻町・百万ヶ辻子町不審ヶ辻町・今辻子町   計6か所
となります。かっては奈良町で30近くあったといわれた「辻」と冠する地名も、江戸時代中期には若干消えつつあったこと、「辻子」という地名が多いことなどがわかります。
 そこで奈良の特徴である「辻子」について、足利健亮氏の研究をもとに若干補足しておきます。
 ア)奈良に特徴的な「辻子」という地名は単なる「辻」の意味ではなく、「町通」(まちどおり)という意味で使われており、もともと京都の町のなかで生まれたものです。地域によっては「図子」「厨子」「途子」などの字をあてる場合がありますが、その多くは1町内外の短い道のことを意味します。
 イ)奈良の「辻子」は中世の「郷」の形成と関わりが深いです。中世の奈良では、南都七郷(興福寺寺門郷)・東大寺郷・大乗院郷・一乗院郷など「郷」と呼ばれる町場が形成されました。したがって奈良の「辻子」は「町通」とは言わず「郷通」、しかもそれ以前の道のことです。
 以下、参考文献をあげておきます。
  @『中近世都市の歴史地理 ―町・筋・辻子をめぐって―』 (足利健亮著 地人書房 1984)
  A足利健亮「辻子再論」 (『橿原考古学研究所論集5』吉川弘文館 1979)
  B『奈良市史』通史2 (奈良市 1994)

                       (山上  豊)

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奈良県立奈良図書館「芸亭」