書誌データベースの構築に向けて − 遡及入力の現状(4)−
新県立図書館基本構想に基づく事業の一つとして、平成7年度にスタートした所蔵資料のデータベース構築5ヶ年計画が3月で終了します。
この機会に県立奈良・橿原両館の遡及入力作業について、その歩みを概観してみます。
当館では、学術情報センター(以下、「学情」という)の共同分担目録システム(NACSIS-CAT)による総合目録データベースの作成に参加して、オンラインで書誌所蔵データを入力するとともに、そのデータを取り込んで自館のデータベースを構築するという方法を採用しました。
まず図書の方は、資料と入力用目録カードを突き合わせ、カードに不備があれば補いつつ、資料にはバーコードラベルを、カードにはタックシールをそれぞれ貼付していき、それと並行して突合済みカードを使ってNACSIS-CATへのヒット率が高いと思われる資料群から遡及入力を開始しました。職員6名による遡及班を結成、作業効率を考慮して当初はオリジナル入力を後回しにし、NACSIS-CATの書誌データにヒットしたものから優先的に入力、次に参照ファイル(JPやTRCなどの既成のMARC)を利用した流用入力を行うようにしました。
また雑誌については、NACSIS-CATの書誌データを自館システム内に取り込んで契約データを作成し、巻号自動更新機能を使いながら所蔵データを登録していきました。今後は作成されたデータを加工し、今年の秋頃にも学情に所蔵一括アップロードを行う予定です。
遡及班では作業人数と習熟度、使用できる端末台数と入力システムのサービス時間といった作業環境から進捗状況や全体の見通しについて、協議、確認を重ねながら順次計画を進めていきました。そしてアルバイトに指示するかたわら、オリジナル入力を行い、登録データの修正が発生した場合には、随時他館と連絡を取りながら書誌調整を行ってきました。
現在、図書約286,000件、雑誌110,000件のデータ入力が終了しています。これは若干の未入力資料が存在するものの、当初の遡及対象資料がほぼデータベース化されたことになります。今後は郷土資料(特に私家版や複製資料等)、また新たに入力対象となった明治期以前の和装本や漢籍類、保管転換資料などのデータ入力を引き続き行っていく予定です。これらの資料は書誌事項の確認も容易ではなく、1件あたりの入力にかなりの時間を要することが予想されます。しかしながら学情でデータを作成している図書館が多くないため、当館への期待が大きい部分といえます。
一方、登録したデータのメンテナンス作業も継続して行っていく必要があります。単純な入力ミス、検索不慣れによる重複書誌データの作成、そして書誌階層(標題〈TR〉と集合書誌〈PTBL〉、巻次〈VOL〉の関係)の判断ミスによる誤った書誌データの作成など、登録データの増加にともなって修正の必要なデータが増えています。年次を追うごとにデータ作成が困難な資料ばかりになっていくにもかかわらず、毎年半数以上のアルバイトが入れ替わり、入力作業に習熟した人が育ちにくいという状況がその一因といえるのかもしれません。また、学情の「入力基準」の例が少なすぎて職員間でも迷うことが多く、その都度個別に質問しながら他館作成の既存データと調整を図ってきた経緯もあります。データの精度はそのままその図書館に対する評価につながるものです。今後も当館では質の高い書誌データの作成をめざすとともに登録データの一層の充実を図っていきます。
創立90年という大きな流れの中で、当館のデータベース構築事業に携わったこの5年を振り返ると感慨深いものがあります。その歴史をたどるように時を遡って入力してきたデータが今後幅広く利用され、NACSIS-ILLをはじめとするネットワーク形成の一助となっていくことを願っています。
遡及入力進捗表 (H.12年2月)
年 度 | 入力件数(図書) | 入力件数(雑誌) |
H7.(1995) | 73,000 | ― |
累計 73,000 | ― | |
H8.(1996) | 71,000 | ― |
累計 144,000 | ― | |
H9.(1997) | 34,000 | ― |
累計 178,000 | ― | |
H10.(1998) | 85,000 | 62,000 |
累計 263,000 | 累計 62,000 | |
H11.(1999) | 23,000 | 48,000 |
累計 286,000 | 累計 110,000 |
(中野 貴世子)