県立奈良図書館は、平成10年6月から連絡車による相互協力業務を始めました。昭和29年に社会教育課の「ひかり号」によって、県内各地域の青年学級・婦人学級約40ヶ所に巡回文庫活動を始めて以来40年余りが経過し、巡回文庫車は連絡車へと衣替ええすることになりました。当時(昭和32年)県内市町村には図書館は数える程しかなく、地域住民の読書意欲を充たすには到底不十分な状態であったろうと思われます。そのため県立図書館がそれを補完するのを目的としていました。それは、読書意欲にあくまで量的な面で応えるものでした。その後、昭和48年度からは県立橿原図書館も巡回文庫活動に参加し、県立二館が互いに協力し、県民の読書振興に努めてきました。
時代が移って、近年、主として県内平坦地区で図書館の建設が行われ、それらの地域については、住民が必要とする個別の図書をその地域に所在する図書館へ届けるやり方に方向転換する時期を迎えました。このような時期に当たって、県立図書館では
- 主として図書館設置市町へは、リクエストに応えるための連絡車の運行(奈良図書館担当)
- 図書館未設置町村へは従来から行ってきています図書の一括貸出(橿原図書館担当)
と役割を二分し、前述しましたように県立奈良図書館は、昨年6月から連絡車を運行しています。
連絡車の業務内容は、市町村図書館への協力貸出、相互貸借資料(市町村図書館間の)の搬送、交換資料の配布を主なものとしております。また各館との情報交換等もその目的の一つとしています。現在、県内23市町の公共図書館24館(県立館1館・23市町で各1ヶ所23館)を対象としています。対象24館を6コースに分け、4週間に1回の割合で運行しています。
昨年6月から今年1月までの8ヵ月間の状況を数字で表してみますと、貸出冊数は668冊で、月平均では84冊になります。昨年度は月平均は44冊でしたので、約1.9倍となっています。また、県内公共図書館間の相互貸借資料の搬送は連絡車の運行によって可能となり、昨年6月から今年1月までの間に152件の図書資料の搬送を行いました。更に、各図書館へは、4週間に1回の割合で運行していますが、必要に応じ、他コースに組み入れています。所蔵調査で県立奈良図書館分を検索したとき感じることは、貸出希望資料に対して所蔵している資料の少なさです。(所蔵率約3割)。つまり、10冊の内3冊しか希望に応えられなかった訳です。但し、最近では、県立二館の資料検索ができるようになり、希望に応えられる割合も上昇してきているものと思います。
連絡車運行開始以来8ヵ月が過ぎ、来年度(平成11年度)に向けて改善できることはないかと考えております。運行先の図書館の要望に少しでも応えられたらと思っています。
連絡車が、図書資料の物流としての位置づけのみに止まることなく、連絡車の運行そのものが、県立館と市町村図書館・市町村図書館間との結びつきの強化に役立てたらと考えています。
(潮田 建)
- 県立奈良→奈良市立中央→生駒市→三郷町立→大和郡山市立中央
- 県立奈良→斑鳩町立→王寺町立→上牧町→河合町→川西町立
- 県立奈良→榛原町立→桜井市立→田原本町立→天理市立
- 県立奈良→香芝市民→當麻町立→大和高田市立→広陵町立
- 県立奈良→橿原市立→県立橿原→御所市立→新庄町立
- 県立奈良→大淀町立→下市町立→五條市立
※ただし、本年度の運行周期は月1回
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連絡車コース表
平成10年8月20日、元奈良県立橿原図書館長辰巳雅彦氏が逝去されました(享年75歳)。氏は奈良県立奈良・橿原両図書館の発展に尽くされました。つつしんでご冥福をお祈り申し上げます。 |
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奈良県立奈良図書館「芸亭」