図書館の情報化の必要性とその推進方策について


― 生涯学習審議会図書館専門委員会報告 ―


 近年の情報化の進展には目を見張るものがあり、社会のあらゆる領域に情報化が浸透しつつある。
 図書館についても、例えば、コンピュータネットワークを通じて、自宅にいながら図書館の提供する情報を得ること等、今後、図書館の提供するサービスは多様化・高度化することが予想される。
 一方、公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用については、いかなる対価をも徴収してはならないと法定されているが、今後、公立図書館が高度情報化時代に応じた多様かつ高度な図書館サービスを実施していくためには、サービスを受ける側にも一定の負担を求めることが必要となる可能性も予想され、対価不徴収の原則を維持しつつ、受益者の負担を求めることについて検討する必要性が出てきた。
 このような状況から、生涯学習審議会図書館専門委員会で種々検討・討議され、平成10年10月27日に次のような報告がなされた。
 昨今の図書館現状報告として、近年、図書館資料の電子化の試みが各地で始まり、資料の電子化の動向について述べられている。
 文部省でも、学術情報センターにおいても所蔵する資料をデータベース化し、インターネットを介して、検索し、表示、印刷できる機能を提供している。また、筑波大学、京都大学、奈良先端科学技術大学院大学など各大学においても、電子図書館の取り組みが行われている。さらに、国立国会図書館においても、独自に電子図書館構想を策定している。
 一方、民間においても、出版社のほか、多様な制作者が出版物や音楽・映像情報をインターネットで配信したりするなど、提供、利用する動きが始まっている。さらに、米国をはじめ諸外国においても電子化された多様な情報の発信が急速に拡大発展している。
 第2に、情報通信技術を利用した新しい図書館サービスが実施されつつある。全国の公共図書館のコンピュータ等の導入状況は都道府県立図書館では98.3%にのぼり、大半は貸出・返却用、発注・整理用、検索用と業務用に使用されている。
 また、有料のオンラインデータベースの利用、インターネット接続コンピュータの利用者への開放、自館からの情報発信(ホームページ上での所蔵情報の検索が可能な図書館)等のサービスが情報機器を利用して実施されている。さらに、新しい情報サービスに対する職員の研修も半数以上の図書館で実施されていると指摘している。
 このような現状を踏まえ、図書館の今後の課題としての新しい役割は、地域の情報拠点となりうるよう、また、今後の高度情報通信社会においても、様々な情報を入手することのできる情報通信ネットワークへの地域の窓口としての役割を果たす必要がある。また、地域住民、特に高齢者や女性に対しての情報活用能力の育成支援をする必要性を訴えている。
 さらに、その具体的な推進方策を次のように述べている。
 まず、情報通信基盤の整備を訴え、コンピュータの設置、インターネット等の利用、CD-ROM等の活用、衛星通信システムの活用等積極的な取り組みを期待している。次に資料の電子化の利点とその活用、司書等の研修及び住民の情報活用能力等の育成をあげている。
 最後に提言として、衛星通信を利用した「こども放送局」や公開講座・講習を図書館を活用して実施できる地域の図書館としての情報通信基盤の整備、郷土の歴史的資料等の新しい地域電子図書館構想、質の高い能力を持った司書等の育成のための研修の充実、住民の情報活用能力の育成、サービスに伴う通信料金やデータベース使用料の負担の在り方、インターネット接続に係る定額料金制度の通信料金等の負担の軽減措置等、積極的に諸点について取り組み早期の実現を図るよう提言している。

(館長 菊永 武司)

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奈良県立奈良図書館「芸亭」