紹介・奈良の本/『第一次奈良博覧会目録』

1874(明治7)年8月、時の奈良県権令藤井千尋のすすめで、植村久道・鳥居武平ら奈良町の有力者が中心となって奈良博覧会社を設立し、翌75(明治8)年4月1日から6月19日までの80日間、東大寺大仏殿と廻廊を会場に第一次奈良博覧会が開かれた。
 この博覧会には、東大寺・法隆寺・春日大社など大和の有力な社寺や諸家が所蔵する什宝や書画のほか、商工業製品・名産品などが出品されたが、なかでも約220件にのばる正倉院御物が出陳されたことは特筆すべきであろう。
 本目録はこの博覧会の陳列目録であり、「奈良博覧会物品目録」第1〜14号と、「会場第三区大仏殿内正倉院宝庫御物陳列目録」第1〜7号からなる。大きさは縦30cm、横41cmの美濃判木版刷り、右肩上に「文部省官許明治八年五月三十一日」の朱印があり、印刷は「西京換文堂印行」とある。
 もっともこの目録によると、この博覧会全部の目録を収録したものではなく、目録第14号の末尾にもあるように、商工業品・産物など売品は第15〜30号に収められているという。また会場を四区に分け、さらにそれぞれを出陳物の種類により号単位で細区分されている。
 正倉院御物は、「会場第三区大仏殿内正倉院宝庫御物陳列目録」に載せられ、東大寺大仏殿内の第三区に陳列され、そのなかで第1〜9号まで細区分されている。主なものとしては「紅染象牙尺」や「黄熟香」「紫壇碁局」「金銅投壷」「木製黒漆水瓶」などがあげられる。
 ちなみに、この博覧会は観客数が17万人を超えるなど盛況のうちに終わったが、奈良博覧会は第一次から1990(明治23)年の第一五次まで開催された。

(山上  豊)


平成9年度近畿地区公共図書館研修・研究協議会の開催について

 平成10年2月3日から4日間、文部省・県教委ほか主催、当館主管で県文化会館を会場に標記研修・研究協議会を開催しました。
 この研究集会は文部省が公立図書館振興事業の一環として例年各府県に委託しているものでこれまでは2日間の日程で開催されていました。しかし、今年度から研究協議会に新たに研修が加わり、近畿地区では4日間の日程で開催することになりました。
 近年の生涯学習の定着やインターネットを始めとする情報媒体や情報通信網の発達など、図書館をとりまく社会環境は大きく変わってきています。当県ではこのような状況を踏まえて、今後図書館は住民サービス向上のためにどのような視点に立った図書館経営を行っていく必要があるか、また、職員もどのようなスタンスに立ち、どのような資質向上が必要になって来るかに主眼を置いたカリキュラム編成としました。また各館とも出来るだけ参加しやすいように、毎日小テーマにそった内容とし、1日単位での受講も認めるというかたちをとりました。各日のテーマは右のとおりです。

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研究協議会 テーマ「いま、図書館に求められているもの −広域利用、相互貸借を中心に−」
研修テーマ 「社会の変化と図書館、図書館員」
研修テーマ 「図書館をめぐる新しい動き」
研修テーマ 「レファレンスの多様化に応えるために」

 参加者は、近畿各府県から310名。4日間では延ベ437名の参加がありました。冬日とも熱心に受講いただき、特に最後の演習では少人数で受講いただけるよう急きょ班分けを実施しました。
 終了後、参加者からは今回の研修に対して図書館の実情実態にあった研修メニューを希望するものや現職教育である以上より高度な内容を希望する意見、質疑応答・意見交換の場の設定など運営方法への意見も出されていました。他方、日常業務に忙殺されるなかで立ち止まって考える機会となった、ニューメディアと図書館の関わりについてかなり鮮明なイメージを持つことが出来るようになったという感想もいただいています。
 今回の研修成果が今後の業務運営の中で活用されることを願っています。

(森川 博之)

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奈良県立奈良図書館「芸亭」