ここから本文です

出征兵から家族への封書

出征する兵士は遺書を残していく者が多かった。下の遺書には、母親、妻、息子、娘、兄、弟、それぞれへの手紙が同封されている。

出征兵から家族への封書 出征兵から家族への遺書

妻へ宛てた手紙

久枝へ
決して悲しんではいけない。
出征の時の固い決心を思ひ起して、決して悲しんでは
ならない。夫を君国に捧げた妻として強く強く
活きねばならない。家を立てゝいくと云ふ事に就いては、
〔三人の兄の名前が記されている〕達が
我が家に取って真に正しいと云ふ指示をして下さる事と
思ひますから、良く従って貰いたい。
母は老身、殊に弱い方故、十分注意、二人分の
孝養をお願い申し上げます。
吾、若し無き■は、三児の養育に専念の事
定めし夫を無くせし人達も多からん     
良く万事を意識して、世のそしりを
受けざる様、特に名誉有る御奉公の出来
得た上、喜んで死を迎へ■喜ひを誇りに軍人の
妻として永久に忘れずに健全なる
国民として三児の父母となりて強く
世に活きる事を願ふ

子どもたちへ宛てた手紙

幸治 美千代へ
お父さんは愈々、天皇陛下の御ために
戦争に行きます。どんな事か有っても悲しんではなり
ません。大きくなったならば、良くお母さんの云ふ事を聞
いて立派な人になって下さい。
幸治はもう大分分って居るだらうか。美千代は未だ父の顔も
分らないでしょう。大きくなったならばお母さんに
お聞きしなさい。行ってきますよ。

母へ宛てた手紙

母上様
充分の孝養を尽し出来なかった事は残念
ですが、お許し下さい
充分身に気を付けて下さい
万事は三人の兄達に御願ひをして居ります。
お母さんの病気は取り越し苦労から起るのです。
何事も決して心配せぬ様にして下さい。

ページの先頭に戻る