図書館システムの導入と新しいサービス


― 閲覧業務を中心に ―


奈良図書館では、平成9年2月からインターネット上にホームページを開設し、7月からは図書館システムが稼動し貸出・返却や整理業務も一新しました。ここでは、貸出・返却、図書検索など、閲覧業務の変更点についてご紹介します。

 奈良県立図書館では現在新しい図書飴に向けて図書館業務の電算化、電子化が進められています。その中で一昨年から導入の準備をすすめていた図書館システム(リコーのLIMEDIO)が平成9年度から稼動を始め、図書館業務が大きく変わりつつありますが、利用者サービスに直接関わる閲覧業務からその状況を紹介します。

OPAC<利用者開放端末>

 一昨年2月からインターネットにホームページを開設し、Web上で所蔵図書の書誌情報をはじめ、電子メールレファレンス、利用案内、絵地図の画像データの提供などのサービスを行っています。これによって当館所蔵の書誌情報約17万冊(平成9年12月現在)が、館内だけでなく家庭や職場のインターネット端末から24時間検索が可能になりました。
 電子メールレファレンスは、現在試験的な段階ですが口頭、電話によるレファレンスと同様の扱いとして利用対象、内容などの制限事項は設けずに受け付けています。現在のところ月5〜6件程度の利用があり図書の所蔵、所在、書誌事項の確認をはじめ特定のことがらに関するレファレンスのほか、当館の利用に関すること、アンケート、新刊書の購入希望、文献取り寄せといった依頼もしばしばあります。館内カウンターでのレファレンスに比べ大学関係者、学生の利用が多いのが利用層の特徴です。
 利用者用のインターネット端末は4台配置されており、当館の書誌情報やwebに公開されている各図書館の蔵書データベースや学術情報センター総合目録データベース(webcat)の挨索をはじめ、インターネット検索によってさまざまな情報にアクセスすることができます。

閲覧管理システム

 平成9年7月からカウンター端末2台を設置して貸出、返却を中心とした閲覧管理システムの稼動を開始しました。これにともない個人利用者の利用者カードの有効期限を2年から無期限に、貸出冊数を3冊から5冊としました。登録の手続きが1度で済むこと、貸出手続きが簡単になったこと、貸出状況など資料の状態がわかりやすくなったことなどが利用者の好評を得ているようです。職員にとっても図書の受入から貸出まで資料の状況が常に把握できることや、NACSIS−CAT・ILL(学術情報センター目録所在情報サービス)の利用も一連の作業として行うことができ、書誌情報の検索機能の充実とあわせて、利便性の高いシステムといえます。

lLL(図書館間相互貸借)システム

 当飴ではNACSIS−CAT(学術情報センター総合目録データベース)に接続して所蔵情報の提供と目録の作成をおこなっていますが、NACIS−CATの書誌データベース(平成10年3月現在書誌件数図書360万件、雑誌21万件)に相互貸借システムをリンクさせたNACSIS−ILLによるサービスもおこなっています。
 利用者が求める図書資料が当館に所蔵していない場合、これまで限られた公共図書館あるいは国会図書館の蔵書目録の検索や電話等による所蔵調査で対応していましたが、NACSIS−ILLの利用によって約590のシステム参加図書館の書誌・所蔵情報を検索して貸借、文献複写の依頼・受付をオンラインで簡単に行うことができます。
 図書の貸借を依頼する場合、所蔵館を検索しその地域、貸出期間、料金支払方法等の利用条件から依頼先を指定し依頼のコマンドを発行します。通常依頼から図書現物が届くまでの処理日数は3〜7日程度。複写文献の取り寄せについても掲載誌、論文名、執筆者、巻号などが確認できればほば同程度の処理日数です。
 またILLシステムは国会図書館蔵書データベースともリンクされており、学術情報センター蔵書データベースに求める資料がない場合はシステムが国会図書館の蔵書を検索し、ILLを一連の業務としておこなうことができます。
 依頼、受付を合わせて月40〜50件の処理件数ですがシステム導入以降増加傾向にあります。

(井上 はるみ)


書誌データベースの構築に向けて


― 遡及入力の現状(2)―

 平成7年度から開始した当館所蔵資料の遡及入力作業は3年が経過しようとしています。
 現在、図書と目録カードの突合作業による件数は約214,000件で、学術情報センターヘの登録件数は約177,000件にのぼっています。これは、逐次刊行物や一部登録対象外資料約15,000件を除くと登録率は85%強になり、遡及対象資料の大部分を登録したことになります。登録された書誌・所蔵データは学術情報センターから定期的にマイクロテープで当館ローカルシステムに取り込まれ、貸出・発注・目録などの各処理に有効に働いています。
 作業の現状としては、学術情報センターのNACISIS−CATにないデータをオリジナルデータとして作成・登録する作業と、平成10年1月から始まった橿原図書館所蔵資料の突合作業を並行して行っています。ノンヒットデータの登録はNACSIS−CATが共同分担目録方式をとっている関係上、精度の高い書誌データ作成が求められます。そのため、登録対象資料からの目録情報源の抽出、書誌の同定識別、既存書誌データとの調整を行い、書誌作成用の「コーディングマニュアル」や「目録情報の基準」との対照・確認を通して、登録作業を進めながら担当者の共通理解と習熟度を一層高めるようにしています。
 登録データとしては、郷土資料や児童図書など公共図書館としての特色が反映され、NACSIS−CATのデータの豊富さの一助になっているのではないかと思われますし、他機関からの相互貸借や複写依頼の要望も予想される資料群になっています。ただ、オリジナル登録したデータについては、作成館の貴任において、データ管理が今後とも続くことを意味しまずので、所蔵登録を行って取り込んだ書誌データも含めて、データの修正や調整作業が続いていくことになります。
 今後の予定は、ノンヒットデータの登録作業に加えて、突合作業の済んだ橿原図書館所蔵資料の登録、また雑誌ファイルで管理する逐次刊行物の登録とローカルシステム上での巻号・ローカルデータの入力作業が続きます。今後も精度の高い信頼性のある書誌データベース構築に向けて作業を進めていく予定です。

(鈴木 陽生)

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奈良県立奈良図書館「芸亭」