クズ(葛)は、マメ科のつる性多年草で、秋の七草の一つである。古来、根は漢方薬に、葉は家畜の飼料に、つるは布の繊維に、花は二日酔いの薬に利用されてきた。
クズの根からとれるデンプンを精製して作られる食用の粉「葛粉(くずこ)」が、和菓子などに使用されるようになったのは、江戸時代中期以降である。
葛粉は、クズの根を砕き、冷水を注いでかくはんし、「吉野晒し(よしのざらし)」という伝統の作業を繰り返したのち、沈殿した純白の粉「生葛」を切り出し、小割りにして乾燥させて作る。
吉野地方は、寒冷な土地なうえ、良質の水があることなどから、葛粉の精製に適しており、吉野葛は品質の高さで知られている。
こうした伝統的製法による吉野葛の品質を維持するため、県内製造業者でつくる吉野葛製造事業共同組合は、吉野地方とその周辺地域で、葛根から採取した葛澱粉のみを原料に、吉野晒しで製造した葛澱粉を特に「吉野本葛」と呼び、特許庁の地域団体商標登録を受けている。
※写真は、黒川本家(奈良県宇陀市大宇陀区上新1921)で撮影