『利他のすすめ : チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵』

作成者
大山泰弘(著)
出版者
WAVE出版 
刊年
2011.4

  著者は、社員の7割を知的障害者が占めながら、業界トップシェアを維持 する会社に育て上げた。しかし、当初は父を助けるために自分の夢をあきら めざるをえなかったという。自分にとって「逆境」そのものだったが、転機 は二人の知的障害をもつ少女を雇用したときからであった。あるとき「施設 に帰すよ」というと泣いて嫌がった。施設にいれば楽に過ごせるはずなのに、 どうしてつらい思いをしてまで働こうとするのだろうか、不思議でならなか った。そこから「人はなぜ働くのか」「人の幸せとは何か」といった根本的 な問に向き合うようになった。その答えを教えてくれたのは知的障害者で、 彼らに学んだ知恵をまとめたものである。
  本書は、「何千年たっても変わらないこと」「誰かの役に立ってこそ幸せ」 「『利他の心』が人生を拓く」「『幸せな自分』をつくる」の4章からなり、 「人の役に立つことが自分の幸せ」であり、「利他」が自分のためになるこ とを知ることが大切であるという。これは、文部科学省の資料にある「生き る力」の根っこになるもので、子供のうちから、できるだけたくさん「人の 役に立つ経験」をさせて、その喜びを追い求めるこころを育ててあげる事が、 力強く生きていく礎になっていく。
  知的障害者に共通する思いは、「人の役に立ちたい、人にほめられたい、 人に必要とされたい」という切実な思いで、この幸せを求めて働くなかで個 性も発見され、育っていくものだという。
  東日本大震災という未曾有の災害にあい、復興に向けて力を合わせていか なければならない今こそ、「利他の心」を大切にしたいものである。