「キムチの文化史 朝鮮半島のキムチ・日本のキムチ」

作成者
佐々木道雄著
出版者
福村出版
刊年
2009.9

  漬けものや辛いものが好きな身としては、スーパーでキムチを手にする機会がよくあります。
  キムチというと、韓国というイメージがありますが、乳酸発酵が進み少しずつ酸っぱくなっていく、本場の製法によるものは必ずしもスーパーに多くありません。 いわば、日本化された形で定着していると言えるでしょう。
  こういった状況が生まれるようになった歴史を解き明かしてくれるのが本書です。 本書は、まず朝鮮半島における漬物の発達を、日本の場合と対比させつつ述べていきます。朝鮮半島で現在のようなキムチが庶民に普及するのは19世紀末と意外と 新しいものの、地域ごとに独自の発達を遂げたといいます。傾向としては、温暖な南方ほど、腐敗を防ぐために多量の塩が使われ、乳酸発酵自体の味は弱まるといい ます。その点から考えると、より温暖で発酵の管理が難しかった日本では、本場のような製法が普及しにくかったのもゆえなしとしません。
  もちろん、日本の漬けものは北へ行くほど塩辛くなるように、気候的なものだけが現在の「日本のキムチ」を左右したのではありません。本書では、明治以降出版 物がキムチをどう取り上げたかを丁寧に追うなかで、日本における普及や、朝鮮半島とは異なる漬けもの漬け方が与えた影響を跡付けています。
  お酒も好きな身としては、全く歴史は異なりますが奈良漬についてもこんな研究が出てくればぜひ読んでみたいです。