「ハーバードの『世界を動かす授業』」

作成者
リチャード・ヴィートー 中條亮子著
出版者
徳間書店
刊年
2010

  天文学的な赤字国債、長引く不況、少子高齢化による年金不安と、日本の将来は危惧されています。それにも関わらず、 為替市場は円高で推移する要因は何だろうと考える方は多いでしょう。この不思議を読み解くヒントとなるのが、今回ご紹介する一冊です。
  本書は、ハーバード・ビジネス・スクールの必須科目であるBGIE(Business, Government, and the International Economy)を30年間に渡り教 え、2009年に同スクール優秀教官賞を受賞したリチャード・H・K・ヴィートー教授の授業を紹介したものです。BGIEは国際政治、経済、企業間の役割につ いて論じるものであり、内容は世界各国の仕組みや戦略を事例分析したものです。 ここから、同スクールが世界の見方をどのように教えているかが窺えます。
  授業ではアジアの高度成長、資源国など世界をいくつかの軌道に分けますが、最初に取り上げるのが、戦後の廃墟から高度経済成長を成し遂げ「日本ミラクル」と 称された日本です。また、巨大債務に悩む富裕国として、その後の日本を分析しており、日本の現状と今後の課題、世界全体における日本の位置付けが明らかとなり ます。この中で経済不安にも関わらず、海外からの配当などで経常収支が黒字を保つため不思議な動きをする為替市場についても言及しています。
  本書は、日本に「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」と讃えられた時代の綿密な戦略を学び直す必要があると提言し、この世界をより良い世界にする、それが私た ちに課せられた使命であると結んでいます。自分たちの将来を他人任せに考えず、世界の動きを学び直し、日々の出来ることを取り組むことから始めようと実感できます。