『柑橘類(シトラス)の文化誌―歴史と人との関わり』

作成者
ピエール・ラスロー著 寺町朋子訳
出版者
一灯舎
刊年
2010.9

  冬の風物詩と言えば、“こたつにみかん”、“お鍋に柚子・酢橘”です。初夏になると夏蜜柑が出まわり、運動会には青いミカン、紅茶にはレモン、 ジュースと言えばオレンジなど、柑橘類は四季を通して私たちの身近にあります。
オレンジと言えば外国産のイメージがありますが、実は、柑橘類は中国で初めて栽培され、ヨーロッパからさらに西、南北アメリカへと伝わったそうです。著者は 化学者ですので、学者的な要素も多く盛り込まれていますが、著者自身のエピソードを織り込みながら、柑橘類の起源や、栽培からその調理法、さらには色名から地名、 ギリシャ神話や絵画にまで話が及んでいます。また、章ごとに、諺や書物の一文が添えられていたり、本文の所々にレシピが記載されていたりと、驚くほどに幅広い話題が 満載の、柑橘類の文化誌となっています。因みに私が、一番興味を持ったのはオレンジジュースについて書かれた章です。ここでも単なる製造法だけでなく、 その歴史や成分のことなど、話は多くの枝葉にもふれながら進んでいきます。
読後は、普段何気なく食している蜜柑ひとつから、さまざまな想いが膨らみ広がっていくことと思います。