『風をつかまえた少年 : 14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった』

作成者
ウィリアム・カムクワンバ, ブライアン・ミーラー著 ; 田口俊樹訳
出版者
文芸春秋
刊年
2010.11

  本著の主人公、ウィリアム・カムクワンバ君は世界の最貧国の一つでもあるアフリカ、マラウイの農村で生まれ育ちました。彼は、貧困 のため、授業料が払えなくなり中学校を退学せざるをえなくなります。それでも学びたい、本が読みたいと小学校の図書館に通い、独学で廃品を利用して風力発電をつくりあげました。
  彼の生まれ育ったマラウイという国は、90%の地域で未だに電気が通っておらず、識字率は6割程度、呪術や魔術といったものが生活の中心に存在している国です。 そんな環境で育った彼ですが、図書館で出会った本から、電気を通すことができれば貧困は改善するのではないかと考えます。そして、疑問は図書館の本で調べながら解決してゆき、 風力発電を開発していきます。周囲からは奇異な目で見られ、彼の作った風力発電は干ばつを起こす呪術だと噂され、風力発電を壊されそうになるなど数多くの困難に見舞われますが、 彼はあきらめませんでした。
  彼のスピーチでの「トライして、やり遂げました。」という言葉には頭が下がる思いです。
  学校を退学した時や、南アフリカの高校への留学中にホームシックになってしまった時など、彼の人生のターニングポイントでは必ず図書館が出てきます。 巻末でジャーナリストの池上彰氏は「図書館で出会った本がきっかけで、人生が切り開かれていく。」と述べています。彼は現在、アメリカの大学でアフリカの暮らしををより良くさせるべく学んで いるそうです。彼のこれからの活躍に期待するとともに、彼のように「学びたい、本が読みたい」という声にこたえられる図書館を創っていかねばならないと強く感じました。