『おおきな木』

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シェル・シルヴァスタイン著

  絵本『おおきな木』をご存じでしょうか。最近、村上春樹氏の翻訳で出版されましたので、 店頭で見かけた方も多いかと思います。
  話は、一言で言えば、一本のりんごの木が、ひとりの男の子に限りなく与え、自らをささげ 続けるというお話です。リンゴの木は、実を与え、枝を与え、最後には切り株になってしまいます。 「それで木はしあわせに・・・なんてなれませんよね」と締めくくられています。ものやこころを与えると いうことの意味を子どもだけではなく、大人にも考えさせる本です。   原題は『The Giving Tree』。くりかえし読み、読むたびに深く心に響いてくる絵本です。リズミカルな本田氏の訳は、 声に出したときにそのすばらしさに打たれます。そのひとつひとつのフレーズがいつまでも心に残ります。   ところで、この新版は、訳者である本田氏が亡くなり、出版元が継続して出版を続けることが できなくなったことから、村上春樹氏の訳で新たに別の出版社から刊行されたものです。 &nsbp; 村上氏は訳者あとがきで、「あなたはこの木に似ているかもしれません。あなたはこの少年に 似ているかもしれません。それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。あなたは木であり、また少年であるかもしれません。 あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。それをあえて言葉にする必要もありません。 そのために物語というものがあるのです。物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。」と記しています。   ちなみに、前出の締めくくりを、本田氏は、「きは それで うれしかった・・・だけど それはほんとかな?」と訳しています。   ぜひ、どちらも手に取り、読み比べてみてください。