『樺美智子聖少女伝説』

作成者
江刺昭子著
出版者
文藝春秋
刊年
2010.5

  樺美智子、昭和35(1960)年6月15日、日米安保条約改定反対運動のなかで 命を落とした大学生の名です。衝撃的な死は、その後さらに激しくなっていった学生運 動の中で語り継がれたといわれます。また一方で、彼女の両親の意向や政治的な思惑も あって、勉強熱心で、無垢で、普通の女子大学生が死んだというイメージが強調され、 それは社会にかなり広く流布したといいます。本書がタイトルに、“聖少女伝説”と記す ゆえんです。
その樺の死より50年。著者は、この伝説に彩られた樺の実像を、丹念な取材をもとに 再現します。
同時代にあった方にはそれぞれの思いがよみがえるでしょうし、また若い世代には、草食 動物と揶揄される若者とは違って、きわめて熱い若者が燃えていた時代があったことを知る 好著であると思います。