『書誌学入門 古典籍を見る・知る・読む』

作成者
堀川貴司著
出版者
勉誠出版
刊年
2010.03

  むかし書誌学の本といえば、難しい名称がたくさん並んでとっつきにくい印象が強かった。書誌学は古典籍を扱う学問だが、 現在は洋装本が中心で和綴じの本はなじみが薄いので余計にそう思ったのであろう。
  しかし、本書は今までの書誌学の本に比べて大変読みやすく、分かりやすい入門書となっている。 これは、著者が大学で書誌学関係の授業と司書課程の科目をもとにしたもので、現代の学生たちの視線を意識しながら書かれた本だからであろう。たとえ ば、古典籍を読むときは、筆記具は消すことのできないものは使用せず、鉛筆がよいことや、机から持ち上げないこと、両手で扱うこと、めくるときは、文字のない余白 部分をつまむことなど、はじめて手にとるときの注意を懇切に説明している。また、関連する情報を集め、これまでの研究の蓄積を調べるためのデータベースを紹介して おり、広く人文科学の研究の入門にもなる内容である。   第一部古典籍を見る(実践編)、第二部古典籍を知る(知識編)、第三部古典籍を読む(応用編)の三部構成で、「モノ」としての書物に目を向けることで、 人びとの織り成してきた「知」のネットワークを浮かびあがらせる方法を教えてくれる。
  著者は、まだまだ埋もれている各地の古典籍の調査や書物の歴史の学習を通じて、自分もまた未来へとそれを受け継いでいくのだという感覚を 身につけて欲しいという。
  図書情報館で和古書の出納に携わっている者として是非熟読したい本の一冊である。