『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』

作成者
瀧澤信秋 著
出版者
光文社
刊年
2019.4

 「星野リゾート」といえば、「星のや」・「界」・「リゾナーレ」など一度は耳にしたことのある名の知れた高級ホテルや温泉旅館を全国に展開・運営している企業として名高い。また、宿泊施設の運営会社として近年注目を集めている。
 著者は経営コンサルタントから転身したホテル評論家である。
 序文には、本書は星野リゾートの推奨本でもなければ、企業研究本でも単なるガイド本でもないとある。“星野リゾートを知ってほしい” “星野リゾートとは何なのか”を大テーマに、星野リゾートの起源から経営手腕、拡大と軋轢、そして、星野佳路代表へのインタビューが綴られ、巻末ガイドには基幹3ブランド(「星のや」・「界」・「リゾナーレ」)のガイドと評価が掲載されている。
 「星野リゾート」は、1914年に軽井沢で開業した「星野屋温泉旅館」を前身とし、星野佳路代表は1987年のリゾート法施行以降、1991年に31歳で社長に就任している。その経営手法の数々がわかるインタビュー記事は、経営学の本としても読むことができる。また著者の宿泊体験や取材を通じた各施設の評価は、通常のガイド本以上に参考となった。
 リゾート事業は通常、所有・開発・運営が一体となっているのが常であるそうだが、星野リゾートは「運営」に特化し、ゴールドマン・サックス・グループと旅館再生事業に着手したことも注目を集め、事業不振に陥った各地の名旅館やリゾート施設の再生に手腕を発揮している。県内でも2016年に明日香村とのパートナーシップを発表、五大監獄の1つ「旧奈良少年刑務所」が監獄ホテルとして2021年開業予定とされており、「星野リゾート」への興味と期待は尽きない。
 本書を読んで、生まれ変わった「旧奈良少年刑務所」や古都保存法の適用範囲であり風致地区条例などの規制を受ける明日香の地にどのようなホテルができるのか興味深く、訪れる日を待ち遠しく思わせる1冊である。