『落語の名作あらすじ100 : 珠玉の古典落語を楽しむ : 面白くてよくわかる』新版 

作成者
青木伸広 著
出版者
日本文芸社
刊年
2017.11

 お正月のテレビやラジオでは、新春番組として漫才、コントや落語などのお笑い番組が多く放送されますね。なかでも、落語は江戸初期の安楽庵策伝に始まるといわれていますが、落語になじみがない方でも「寿限無」「饅頭怖い」などの演目名を聞いたことがあるのではないでしょうか。本著では、これら古典落語について、特に人気のある100編のあらすじを紹介しています。
 例えば「超基本ネタ」のひとつ「時そば」は、そば屋の勘定を隣の客がうまくごまかしたことに感心した主人公が、別の店で同じ手口を試してみたところ、本来の勘定よりも多く支払うはめになってしまう間抜けさが笑いを誘う内容ですが、生き生きとした登場人物の台詞と、必要最小限の状況説明がテンポよく書かれています。登場人物の相関図も載っていますので、あわせて読み進めればストーリーがより理解しやすくなっています。他にも、この時季にぴったりの「芝浜」「初天神」や、現代に伝わる落語の原型になったと思われる「子ほめ」など、珠玉の演目ばかりです。
 これらはいずれも古典落語ですが、その面白さは古き良き時代から現代まで変わらず親しまれています。それは、市井の人々の生活、夫婦愛、人情や権力者への反骨精神など、落語の持つテーマが決して古びていないからにほかならないと、本著で述べられています。近年また落語ブームが起きていると言われますが、どうにもならない日々を笑い飛ばして明るく生きたいという人々の願いからくるのかもしれません。落語は少し敷居が高いと思われる方でも、まずはコンパクトにまとまったあらすじ集で、落語のもつ暖かさとユーモアに触れてみてはいかがでしょうか。