奈良餅飯殿町年代記『諸記録』

作成者
生駒古文書を読む会 編 谷山正道 監修
出版者
生駒古文書を読む会
刊年
2017.12

 明治150年となる今年は各地で記念事業が行われている。しかし当時の民衆たちにスポットをあてたものはどれだけあるのだろうか。昨年12月に1冊の史料集が刊行された。奈良市の中心部餅飯殿町で幕末・維新の前後約20年余りにわたって書き継がれた記録『諸記録』を翻刻したものである。
 この記録を翻刻したのが「生駒古文書を読む会」の方々である。生駒古文書の会は2000年に結成された生駒市生涯学習グループ「古文書を読む会」を前身とし、2003年から年1回のペースで会報『いこま』を発行、県内の未公刊古文書を中心に発表してきた。この『諸記録』も2014~16年に会報『いこま』で発表したものをメンバーが中心になって新たに1冊の本として刊行したものである。
 『諸記録』には開港や大政奉還のような大事件も記されているが、奈良や町内の出来事も詳しく記されている。コレラの流行、徳川慶喜の春日社参詣、長州戦争による米価の高騰、戦争から奈良に逃れてくる人々といった幕末・維新の奈良の様子が見えてくる。しかし混乱だけの世相でなく、餅飯殿町では戊辰戦争直後の混乱さめやらぬ時期に会所の修理を行っているし、死鹿の処理といった日常の業務も続けられている。
  明治150年ということでどうしても維新の元勲ばかりに目が行ってしまうが、当時の民衆たちにも注目したい。