『更地の向こう側 : 解散する集落「宿 (しゅく) 」の記憶地図』

作成者

東北学院大学トポフィリアプロジェクト編

出版者

かもがわ出版

刊年

2013.8

 東日本大震災が発生してから6年以上が過ぎようとしていますが、被災地の復興は現在も続けられています。
 ここで紹介されている地域は、宮城県気仙沼市唐桑町の「宿」(しゅく)という集落です。
 宿は、リアス式海岸の一部、陸前高田市と気仙沼の北に位置する唐桑半島の付け根に位置する湊ですが、大津波により62世帯中54軒の家が流され、集落の人々は離散するという経験をしています。
 人々のなりわいが一瞬にして消え、日常の生活が非日常となる自然災害の猛威。
 これは特定の地域に限定したものではありません。日本列島に暮らす私たちは常に災害と背中合わせの暮らしをしているとも言えます。
 被災から復興へと向かう人々にとって、かつて暮らした土地に対する思いや記憶はどのように伝承されていくのか。
 ややもすると、震災との関係だけで語られる被災地について、東北学院大学の経済学、民俗学、経済学、人類学、オーラルヒストリーなど各分野の教員で構成されたプロジェクトチームは、宿に暮らした人々の生活や歴史を丹念な聞き取りによって記録に留めています。
 記録は、船運によってもっともにぎやかだった昭和30年代とそれ以前。生活様式の変化と陸路の整備によって、船運が車やバスへと移っていく昭和40・50年代。そして震災後の3つの時代に集約して、聞き取りをもとに描かれた3つの絵地図とともに細部にわたって丁寧にまとめられています。
 この本は、刊行されてからしばらく経ちますが、震災後の時の経過とともに、日々変化する被災地について、定点による過去の記憶をとどめた貴重な記録集として、未来の人々に伝承される文字による生活遺産の一つになるものと思います。