『井伊直虎 : 戦国井伊一族と東国動乱史』

作成者
小和田哲男著
出版者
洋泉社
刊年
2016.9

 書店の歴史書コーナーへ行くと大河ドラマ関係で新刊が置いてあるのを目にする。去年から今年にかけては「おんな城主 直虎」の主人公井伊直虎について相次いで本が出版されている。説明不要かもしれないがドラマの主人公井伊直虎は戦国時代に生き、当主を相次いで失った遠江(静岡県西部)の井伊氏を継いだ女性である。ドラマの視聴率は苦戦気味だそうだが、大河ドラマが話題になるのは変わりがないということか。
 いくつかある関連書籍の中から今回注目したのが、本書『井伊直虎―戦国井伊一族と東国動乱史』である。著者の小和田哲男氏は戦国史を専攻する研究者で今作でも時代考証を務めている。一般書の執筆や講演、メディアへの露出も多いのでご存じの方もいらっしゃるのではないだろうか。
 その著者だが研究者としては戦国大名今川氏を研究したことで知られている。ドラマでも尾上松也演じる今川氏真が登場するが井伊氏は今川氏に従っている。また井伊氏の本拠井伊谷のある静岡県引佐町(現在は合併して浜松市)が『引佐町史』を編纂した時には委員として現地調査を行ったこともある。当然戦国時代の井伊氏に詳しい。ところが戦国時代以前の井伊氏については史料が少ないこともあってわからないことが多いという。そんな謎の多い戦国時代の井伊氏そして井伊直虎の実像に迫った一冊である。