『現代思想の転換2017 : 知のエッジをめぐる五つの対話』

作成者
篠原雅武編
出版者
人文書院
刊年
2017.1

 ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任し半年が経とうとしています。アメリカ第一主義を掲げ、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など、保護主義的な政策を進めようとしています。また、イギリスは国民投票で、EU離脱の道を選択し、世界に大きな衝撃が走りました。このような出来事を耳にすると、世界は今、時代の転換期にきていると思われている方も多いはずです。
 本書は哲学者の篠原雅武氏が哲学、文学、歴史学など、分野を異にする5人の学者へのインタビューを通じ、現代社会の様々な共通意識を探っています。トランプ現象にみられるポピュリズム(大衆迎合主義)や排外主義の問題について「反ファシズムのスタンスを、素朴な正しさに依拠するのではないやり方で見出だすことが求められている。」と編者は言います。
 本書の内容は、インタビュー形式で比較的平易に書かれているとはいえ、哲学初心者の私などには難解で、2~3回読んだくらいではどこまで理解できているかわかりません。それでも、今起こっている世の中の現象を俯瞰し、知の先駆者の誘導で哲学的に考えてみると、今までとは違った景色が見えてきます。
 日常的には暗い出来事についつい目が行きますが、世界では今、新しい思想が確かに生まれているようです。それを私たちがしっかり認識し、共有すれば、未来はそんなに悪くないのではと思える一冊です。