『こんがり、パン』

作成者
赤瀬川原平 [ほか] 著
出版者
河出書房新社
刊年
2016.5

もうすっかり秋ですね。秋といえば“読書の秋”と図書館員としては言いたいところですが、個人的にはどちらかというと食欲の秋です。では、そのふたつを満たすものはないかと思い、今回選んだのがこの本です。焼いたトーストのような色をした表紙からして美味しそうなこの本は、古今の作家41人が書いたパンにまつわるエッセイをまとめた一冊です。
例えば、中原淳一はサンドイッチでのおもてなしを、江國香織はフレンチトーストの魅力を、平松洋子はパンの耳への愛を、犬丸りんはヤキソバパンへの思いを、それぞれ書いています。また、角田光代はパンを食べることではなく作ることの魅力を述べています。長田弘のショウガパンの物語についての文章には、ショウガパンの作り方も書いてあります。開高健の「パンに涙の塩味」は戦後の飢えとパンについての辛い思い出です。このように、パン愛に溢れた作品だけではなく、その当時の時代背景など様々な味わいを感じさせる作品も多く収録されています。読めばパンが食べたくなることは間違いありません。
また、いろいろな作者の文章に触れることが出来ますので、新たに気になる作家を見つけることも出来るかもしれません。
当館3階YAコーナーでは10月1日から図書展示「読書の秋、始めませんか-『食ベもの』のお話に満腹-」を行います。ブックガイド本や「食べもの」が登場する小説などを展示していますので、この本以外にも、読書の楽しみだけではなく食の魅力も感じられるような本がたくさんあります。中高生以外も楽しめる展示となっていますので、ぜひそちらもご覧ください。