『恋の名前』

作成者
高橋順子文 ; 佐藤秀明写真
出版者
小学館
刊年
2016.2

恋の形は十人十色、今この瞬間も様々な恋愛模様が繰り広げられていることでしょう。もちろんその中には失恋や修羅場もあるかと思います。
『恋の名前』と銘打った本書は、長い日本の歴史の中で「恋」や「愛」について表現してきた言葉を収録したものです。昨今の「草食男子」なる言葉の流行などから、日本人は恋愛に関して関心が薄いイメージがあります。しかし本書に取り上げられている言葉を見ると、昔の日本人が恋愛に対して実に多くの関心を費やしてきたのかがわかります。そして、恋愛の様々な場面を美しい言葉にして表現してきたのです。
ただし恋愛は良い言葉だけでは語れません。「恋焦(こいこ)がれる」といった耐え難き恋、道にはずれた「邪恋(じゃれん)」、うらみ募った「春怨(しゅんえん)」など、苦しみや妄執もつきまといます。しかし詩人である著者は恋愛にて自分のことや相手のことを思い悩む時間を指して次のように書いています。
「(中略)それは非効率的な無駄な時間かもしれないけれど、いわば恋に水やりをしている時間です。人生の味のする濃密な時間です。」(本書4頁)
著者の言う「恋に水やりをしている時間」を表現したのが「恋の名前」であるとするならば、本書に収録されている言葉は、日本人の「人生の味のする濃密な時間」が結実したものと言えるのではないでしょうか。
自身の恋愛がどの言葉に当てはまるのかを探しつつ、恋愛の美しさ、悲しさを日本語で味わう一冊です。