『箸墓古墳』

作成者
大阪府立弥生文化博物館 編
出版者
東京 : 学生社
刊年
2015.10

 大和の古代道路であった山辺の道と並走して敷設されているJRの万葉まほろば線に、桜井駅から乗り奈良に向かうと、二つ目の駅が巻向の駅になります。駅周辺は古代には纏向王宮が置かれたところとされ、近年の発掘調査の成果を反映して、邪馬台国の存在や卑弥呼との関係が取りざたされ新聞の紙面をにぎわせています。
 その発掘現場の南にあるのが箸墓古墳で、車窓からは後円部を東に向けた姿をまじかに見ることができます。全長約280メートルの巨大前方後円墳で、古墳の定義にもよりますが定型化した最古の古墳とされています。文献には、箸中山古墳や倭迹迹日百襲姫命大市墓、箸陵といった名称でも表わされています。
 現在はこんもりと木々に覆われて、静かなたたずまいを見せていますが、その存在は早く『日本書紀』の崇神天皇10年9月条に、有名な箸墓伝説として出てきており、その後の紀行文や寺社記などにも散見され、多くの伝承と古代ロマンを秘めています。
 この古墳について、平成26年3月に大阪府立弥生文化博物館が主催した連続講演会「纏向と箸墓」が開催されました。本書はその講演録を収録したもので、全6回のうち、5回分が載せられています。
 収録された記録では、石野博信氏をはじめ箸墓古墳の発掘や研究に携わってきた5人の考古学者がそれぞれの視点で箸墓の実態に迫っています。纏向王宮と箸墓古墳の関係、古代史と纏向石塚古墳など周縁の古墳との関連、古代政治史や古墳築造の変遷から読み解く邪馬台国と纏向遺跡や卑弥呼と箸墓古墳との関係、関連する文献史料や基本資料に基づいた考察、『魏志倭人伝』からの考察、古墳の立入り調査と築造への考察など、それぞれに興味深い解説をしています。