『ねこはすごい』

作成者
山根 明弘著
出版者
朝日新聞出版
刊年
2016.2

 空前の猫ブームといわれ、巷では現政権の政治政策「アベノミクス」になぞらえ「ネコノミクス」という言葉も現れ、猫が経済に及ぼす効果まで試算されています。家庭での飼育数でも、犬の約991万頭に対し、約987万頭まで迫っています(平成27年度全国犬猫飼育実態調査より)。
 今回紹介する『 ねこはすごい 』 は、北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)学芸員でもある、動物学者の山根明弘氏の著作です。
 この著者には、福岡県相島での7年間にわたるフィールドワークを実施した、ノラネコの生態についての著書もあります。
 本書は今や、人間にとってかけがえのないパートナーとなった「ねこ」の、身近な存在でありながらあまり知られていない、猫の持つ優れた「身体能力」や「感覚力」、そして人間の健康増進や心の病まで癒やす「治癒力」についての考察や、人間と猫の共存社会のあり方について日本の「ねこ文化」の章で解説しています。
 走る時の最高速度は時速50キロメートルにも達し、ハンターのような瞬発力や嗅覚、人間の5倍もある可聴力など、その優れた能力は目を見張るものがあります。また、約3500年前古代エジプトで完成したといわれているねこの歴史や、人々を魅了するねこ文化などが紹介されています。一方、ねこを取り巻く現代社会の課題としては、殺処分の問題があります。野良猫の保護・譲渡の取組など自治体や保護団体の人々によってなされていますが、保護センターへ持ち込まれる飼い猫も後を絶たないそうです。
 ねこの興味深い世界に浸るとともに、より良い共存社会とするにはどうすれば いいか考えさせられる著作です。