『植物は<知性>をもっている : 20の感覚で思考する生命システム』

作成者
ステファノ・マンクーゾ, アレッサンドラ・ヴィオラ著 久保耕司訳
出版者
NHK出版
刊年
2015.12

皆さんは、トマトは虫に食べられていると気付くと周りの仲間に身を守るよう緊急連絡していることをご存知でしょうか。トマトは私たち人間のように言葉で伝えることは出来ませんが、匂いを葉から放出させて危機を知らせるそうです。そして情報を受け取った他の葉は自ら毒性物質を作り、虫を撃退します。コミュニケーションの方法は異なりますが、情報を伝え合い防御行動をとっている点で私たち人間と同じ行動をしているのです。
著者によると、植物の感覚は人間よりもずっと敏感で、私たちの持っている五感以外に少なくとも15の感覚を備えているといいます。例えば、重力、磁場、湿度を感じてその量や大きさを計算しデータを蓄積しているようです。しかもその能力は驚くほど高く、色々な化学物質の土壌含有率も分析できるのだそうです。その緻密なデータのもと、養分の豊富な土の探索を行い、他者との生存競争に打ち勝つ対策をとり、自分たちがより繁栄できるようさまざまな活動を行っているのです。
ご存知のように私たち動物が植物から受けとる恩恵は数知れません。鮮やかな色とりどりの美しい花々、美味しい穀物、野菜そして甘い果物。それらは神様からの「恵」で、植物はただ与えてくれるものと多くの人が考えていると思います。しかし、こうした「恵」も植物たちの戦略による相互扶助だと著者はいいます。どんな果実も種が成熟するまでは目立たないように周りと同化した青色で、食べられないよう実は堅く、毒があり渋いものまであります。成熟した種子になった時に初めて、種子を遠くまで運んでくれる動物が好む色鮮やかで香りのよい甘い果実になるのです。
植物たちの知略に富んだ世界を知り、私たちの価値観を変えてくれるおすすめの一冊です。