『世界の美しい階段』

出版者
エクスナレッジ
刊年
2015.8

パケ買い、ジャケ買いという言葉がありますが、書籍にも思わず手に取ってしまう装丁や表紙を持つものがあります。
今回紹介する本の表紙は、まるで宮殿のような建物内に配された緩やかなカーブを描く階段、そこに敷かれた繊細な模様の青い絨毯、背景の金のモチーフ入りの赤い壁紙、その全てが相まって重厚で華やかな雰囲気を醸し出しています。この表紙は英国の歴史あるホテルの内部を写したもので、「ヨーロッパ一壮大」と評されるその階段では数々の映画撮影も行われてきたそうです。
こんな印象的な表紙を持つ今回の一冊は世界各地の階段を集めた写真集で、いくつものユニークな階段が紹介されています。
まず「名作階段」の章では前述のホテルのほか、圧倒的な存在感を放つ老舗書店の通称「天国への階段」、百貨店の吹き抜けに設けられたゴージャスで非日常的な空間を演出する大階段、巻貝を思わせる優美な形状の螺旋階段など様々なタイプの階段が登場します。
続く「絶景の階段」では、岩山の頂上に築かれた教会に至る石造りの階段、迫力満点の滝の傍に設けられたスリリングな階段など、眼下に広がる絶景を楽しむことのできる、自然と融合した階段のある名所が紹介され、ちょっとマニアックな旅行ガイドを開いているかのようです。
一方最終章の「街角の階段」に収められているのは、人々の生活の場面にある、実用的でいて周囲との見事なマッチングをみせる階段です。建物の装飾や傍らに植えられた草花と美しく調和した住宅の階段や路地裏の階段が国別に並べられ、地域ごとの雰囲気を感じとることができます。
一般的に階段は建造物を構成する一パーツであり、どちらかと言えば脇役的存在ですが、そこに焦点を当てた本書の階段はいずれも主役級。ページをめくるごとにワクワクできてしまう、そして眺める楽しみに浸らせてくれる一冊です。