楳図かずお論-マンガ表現と想像力の恐怖

作成者
高橋明彦著
出版者
青弓社
刊年
2015.6

今回は、金沢美術工芸大学教授である高橋明彦氏による楳図かずおの研究書『楳図かずお論-マンガ表現と想像力の恐怖 』を紹介する。トレードマークの紅白の縞シャツのような表紙からしてインパクトのある一冊。楳図かずおは曽爾村や五條市に住んでいたことがあり奈良県に関わりの深いマンガ家で、本書のような詳細な楳図かずお論は初めてではないかと思われる。
書き下ろしである「はじめに-楳図かずおと世界の秘密」から本編12章と、60年にわたる作家生活の中で生み出された多数の作品目録と年譜考略・索引など本書は516ページからなる。
楳図かずおに関する総合的な研究書といえ、著者は「本書が企図したものは、楳図かずおによる表現とその内容に対する論究であり、かつマンガ表現に関する原理論の検証およびその楳図作品への適用である。」と述べているように、文字通り楳図作品の世界を内外から考察し、楳図作品の世界を詳細に知ることが出来る著作になっている。
あとがきに資料には遺漏も未調査もなくとあるように、作品目録と年譜考略は、圧巻です。近年楳図自身は、腱鞘炎とのことで残念ながら執筆はされていないが、現在も映画制作や音楽活動など多彩に活動をしている。本書により、奈良県の誇る恐怖マンガの巨匠としてもっと広く一般に知らしめてもらうきっかけになればと思う、そして、願わくば新たな楳図ワールドを描いてほしい。ぜひ、楳図ワールドの奥深さと真骨頂を楽しんでみてください。