『本の夢小さな夢の本』

作成者
田中淑恵著
出版者
芸術新聞社
刊年
2015.7

とても小さな本のことを豆本といい、一般的に縦10cm・横6cmル以下のものを指します。手のひらサイズよりもさらに小さい、手の中サイズの愛らしくも美しい本です。
本書では、豆本に魅了された著者が中学2年の頃に初めて作った豆本の思い出や、装丁家の仕事をするなかで出会った寺山修二・久世光彦といった人々、物語・詩・童話など本に関するエピソードがつづられています。
装丁の仕事は、製本の仕上げとして書物の表紙・扉・カバーなどの体裁を整えることです。著者は装丁家として出版物の外形を整えデザインすることを仕事とする一方で、豆本作りをライフワークとし、「仕事として多くの装丁に関わり商品としての本作りを経験して、小さな本が、大きな本の単なるミニチュアではなく綿密なレイアウトで作られるべきものと思いました。」と語っておられます。
きれいな和菓子の写真や自作の童話・詩を仕立てた豆本がカラー写真で掲載されており、本に使うアンティークパーツ・秘蔵の紙や革や布の紹介・リボンで綴じる豆本の作り方も紹介されています。エッセイ・本の紹介・豆本の写真集といった多様な楽しみ方ができます。また著者自らが本書の装丁を手がけておられます。内容だけでなく外形のレイアウトや色づかいなどに注目してみるのも面白いかもしれません。
手の中サイズの幸せに満ちた本をながめる、自分だけの本を作ってみるなど、新たな本の魅力に出会える一冊です。