『福井県の学力・体力がトップクラスの秘密』(中公新書ラクレ 508)

作成者
志水宏吉, 前馬優策編著
出版者
中央公論新社
刊年
2014.10

空調で文部科学省が平成19年度から実施している「全国学力・学習状況調査」が、年々注目を集めています。教育学者である著者は、同調査で常に上位にランクインし、さらに全国体力テストでもトップクラスである、福井県の強さの秘密を探ります。
 福井県は経済的に豊かなところだそうです。夫婦共にフルタイム勤務し、同居・近隣の祖父母が子どもと田んぼの世話をするというような、「企業と家計が相互に支え合う構造が成り立っているのが福井の経済の特徴」と述べられています。このことが、家計の安定(世帯全体の高収入)、家庭の安定(離婚率が低い)、地域の絆(転居率が低い)を強め、非行や落ちこぼれを防ぐ教育環境を醸成するのだそうです。
 そして教師の質の高さが挙げられています。教育学部出身者が多く、研究熱心で、校内研修だけでなく、県規模の研究会が各学校で網羅的・継続的になされているとのこと。また、ベテランと若手をつなぐミドルリーダー層が厚い、管理職を含むほとんどの教師が単一の教職員組合に属しているということは、他県に類を見ない福井県特有の教育現場かもしれません。
 ただ、福井県にも課題があるようです。「不登校率の高さ」だそうです。この課題を克服できれば、全国の地方都市が学べるいちモデルになれるのかもしれません。地域のちがい、文化のちがいを、かいま見るつもりで読んいただいても、興味深い1冊だと思います。