『世界が認めたニッポンの居眠り : 通勤電車のウトウトにも意味があった!』

作成者
ブリギッテ・シテーガ著 畔上司訳
出版者
阪急コミュニケーションズ
刊年
2013.6

空調で適温に保たれた電車に乗りこみ、運よく席に座れると、いつの間にかウトウト。程よい雑音と揺れで、眠りは一層心地よくなり、下車直前までコクリコクリと船を漕いだり、背後の窓に頭を預けて爆睡したり。私たちには見慣れたこんな日常の一コマも、外国人の目には不思議な光景として映るようです。
本書は、日本の日常生活を研究するドイツ人研究者による著作「居眠り:日本人の睡眠と、そこから私たちが学ぶこと」の邦訳です。本国で原書が発表された当初、「イネムリ」は様々なメディアに取り上げられ、大きな反響があったといいます。勤勉なイメージとはうらはらに、多くの日本人が、電車の中だけでなく、会議や授業の最中にも居眠りをすることは、昼間に人前で眠る人などほとんど見られない西洋社会では、驚きをもって受けとめられたようです。
初めて日本に滞在した際に見た、電車内での居眠りに興味をもったことをきっかけに、著者は日本の睡眠について研究し始めます。
例えば電車内での居眠りと仕事中の居眠りは、同じようでいて、社会学的には両者の性質は異なるそうです。電車内で眠るのは、主たる行動(目的地への移動)の邪魔にならず行うことができる、「編みもの中のハミング」のようなものです。一方、仕事中の居眠りは、「その場への関与の度合いによっては追求可能」なもので、このタイプの居眠りは、日本の社会では、ある一定の条件下で、ルールに沿ってなされている場合には許容される、としています。
このように、私たちが何気なく行っている居眠りという行為が、研究対象となり、細かく分析された本書。外国人の視点からまとめられた、思いもよらない指摘や、ユニークな解説が興味深い一冊です。