『ぐつぐつ、お鍋』(おいしい文藝)

作成者
阿川佐和子[ほか]著
出版者
河出書房新社
刊年
2014.12

立春も過ぎ、暦の上では春ですが、まだまだ寒い日が続いています。そんな季節には、食卓に「ナベ」が上ることが多いのではないでしょうか。
 古今東西の文豪たちも同じだったようです。本書には名著から抜き出した37人の文筆家達の「ナベ」にまつわる熱いエッセイが収められています。すきやき、おでん、水炊きなどの定番ナベはもちろんのこと、腐乳鍋、納豆鍋など一風変わったナベまで、文豪たちの拘りの「ナベ」が登場します。
 本書の中で、例えば、池波正太郎は飽きることのない「小鍋だて」への拘りを、ねじめ正一は父との二人旅で食した「すき焼き」の思い出を、本上まなみは本物の「きりたんぽ鍋」への憧れをそれぞれ述べています。
 ひと口に「ナベ」といっても、出汁に具材、煮込み方から食べ方、一緒に鍋を食す人まで、それぞれに拘りがあり、まさに鍋奉行の集まりといったエッセイ集となっています。
 寒い日が続く今日、「ナベ」が続いていても、やっぱり今夜も「ナベ」にしようと思ってしまう一冊です。
 本書は、名著より食に関するエッセイを抜き出し食材ごとにまとめた「おいしい文芸シリーズ」の一冊です。「ナベ」の他に「ラーメン」「ごはん」等が刊行されています。併せてお勧めします。