『美術、応答せよ! 小学生から大人まで、芸術と美の問答集』

作成者
森村泰昌
出版者
筑摩書房
刊年
2014.7

  『趣味は何ですか?』と聞かれたら、みなさんはどう答えますか。『芸術鑑賞です。美術館巡りが好きで…』と知的にかっこよく答えてみたいと思ったことはありませんか? でも実際に芸術作品を目の前にして、『うん? どこがいいのかよくわからない!? とりあえずわかった風な顔をしておこう…』なんて思いをしたりして。わからない作品が多いと「趣味は芸術鑑賞!」とはなかなか言いにくいですよね。いったいどんな見方をすれば芸術作品を楽しむことができるのでしょうか。
  本書は現代美術家の森村泰昌氏が美術に関するさまざまな質問に応える問答集。氏はセルフポートレートという手法で、自らの身体を使ってゴッホの自画像やマリリンモンローなどを表現し、世界で評価を受けている美術家です。2003年織部賞、2011年毎日芸術賞を受賞。そして紫綬褒章を受章されています。美術問答は全37問。写真家のアラーキーこと荒木経維氏からの一癖ある問いや、小学生からのかわいい質問も。著者の応答は美術だけにとどまらず、深い人生観や哲学にも及び、読み進めるうちにどんどん森村ワールドに引き込まれます。「与えられた『問い』を持ち帰り、ねじり鉢巻をしてうんうん唸り、答えを何とかひねり出す」と著者は告白していますが、真面目でひたむき、温かな人柄が伝わってきます。
   芸術に関心のある方はもちろん、そうでない方にも、美術の楽しみ方が大きく広がるお薦めの一冊です。