『47都道府県・地鶏百科』

作成者
成瀬宇平、横山次郎著
出版者
丸善出版
刊年
2014.7

秋も深まり、冷え込む夜は温かいものが食べたくなる。赤提灯のもと焼き鳥の串を片手に熱燗を一杯、はたまた、白い湯気の立ちあがる鍋に浮かぶ鶏肉をいただく姿を思わず想像してしまう。カロリー控えめのヘルシーさと淡白な味から鶏肉料理を好む人は多い。何より、卵焼きは子どもから大人まで万人に好まれているお弁当の定番でもある。そんな身近な鶏について様々な知識を伝授してくれるのが本書である。
一般家庭で鳥料理と言えば鶏の料理である。肉用のニワトリは、地鶏とブロイラーに分かれる。ブロイラーは肥育した若鶏のことを指し、最もポピュラーに食されている。地鶏はJAS法上で親鶏の基準以外に、飼養密度や機関、方法等が定められている。さらに品種でいう「地鶏」はもっと狭い範囲の鶏を指し、岐阜地鶏、伊勢地鶏、土佐地鶏、芝地鶏、トカラ地鶏、徳地地鶏など、弥生時代に渡来した鶏を祖先として、各地の環境に適応した鶏をいうと書かれている。日本全国には約200種類の地鶏や銘柄鶏がある。銘柄鳥はブロイラー由来と地鶏由来のものがあり、いずれも差別化を図るため、飼料や自然の状態での飼育法などに工夫を凝らしている。
第1部は、食用としての鶏(鳥)肉の種類や歴史、肉の各部位の特徴や栄養価、美味しさの要因について、また、鶏卵とその他の卵の特徴、卵かけごはんや卵の種類などについて、専門的ではあるがわかりやすく解説している。
第2部は、1世帯当たりの年間鶏肉・鶏卵購入量の統計数値を年ごとに比較したり、鶏(鳥)とたまごの食文化について各都道府県の特徴が書かれている。地域特有の鶏や卵を使った料理や菓子、地鶏や銘柄鶏、地産の卵も紹介している。
巻末には、ニワトリ38品種の一覧や、各都道府県の郷土料理や菓子などが紹介されており、最後まで楽しんで読める。ちなみに奈良県は、1300年前から食べられているという飛鳥地方の郷土料理「飛鳥鍋」、おん祭りの日に食べられる「奈良のっぺ」などが紹介されている。
ひとことで地鶏と言っても本当に多くの種類があることが分かる。うんちくを並べるつもりはないが、「地鶏鍋」などの看板を見ると、産地はどこかと少し気になりそうである。