『林業男子:今の森、100年先の森』

作成者
山崎真由子著
出版者
山と渓谷社
刊年
2014.5

   今、日本の林業界に“風”が吹いているという。
   林業小説「神去なあなあ日常」(三浦しをん著 2009)がベストセラーとなり、映画化された。若い人たちが主体となった林業事業体「東京チェンソーズ」がメディアで注目され、女子の力で林業を活性化させようとする「林業女子会」が各地で結成されている。
日本の林業界は、かつてない危機にさらされている。それは過伐採による危機ではなく、木材需要量の減少によるものである。国産材が利用されなくなったことで、森林保全に必要な手入れが行き届かず、森林としての健全性が失われ荒廃していくという歴史上初の危機である。
   1989年「割り箸を使用すると熱帯雨林が破壊される」という報道を発端にして起きた「割り箸の使用をやめよう」という運動。これは日本で使用される割り箸の数が年間約250億膳もあり、それを「使い捨てる」行為が、「森林資源を使い捨てて無駄にしている」という乱暴な意見にたどり着いてしまった結果である。これは大きな誤解である。確かに中国等からの輸入品の割り箸は割り箸専用の材木で作られており、乱伐など環境問題への影響が懸念されている。しかし、国産の割り箸は間伐材や木材加工時の残材・余材を利用して作られている。日本では割り箸を作るためだけに伐採される木は存在しないのである。むしろ森林環境のためには国産割り箸を使うべきであると本書は述べている。奈良県は森林率が77%と県の半分以上が森林であり、国産割り箸の生産量の7割を占める。割り箸を含め間伐材を利用した商品を使うことが、人工林を守り育てていく資金還元になり、しいては森林の環境改善に貢献することにもつながる。
   林業を取り巻く現状は厳しいものがあるが、その様な中にあっても100年後、200年後の森林を想い、苗を植え、道を作る人たちがいる。本書は、林業に対して熱い思いを持ち行動する人たちを紹介する資料であり、林業の新たな一面を知り、林業に明るい未来を感じさせる一冊である。