『古事記と小泉八雲』(日本人の原風景1)

作成者
池田雅之、高橋一清編著
出版者
かまくら春秋社
刊年
2013.3

  英国人の言語学者チェンバレンが明治15(1882)年に著した英訳『古事記』との出会いにより、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、日本へ の関心を深め、明治24(1891)年の春、日本の地を踏む。古事記の主要な舞台である出雲の地・松江に、尋常中学校の英語教師として赴いたので ある。ハーンはオオクニヌシの「国譲り」神話に示された、戦わずに国を譲り平和を選ぶ「和譲」の精神に共鳴するとともに、日本の原風景を随所に残 す出雲地方の信仰や風俗とそこに暮らす人々への考察を深め、多くの著作を遺した。
  本書は、ハーンが『古事記』をどのように理解し、捉えていたのかという点と、ハーンの『古事記』と出雲地方に対する想いを通じて、彼の人物像を 浮き彫りにしようとするものである。   出雲学研究者、国文学者、比較文学者、作家、宮司など、多彩な執筆陣によって、古事記・出雲・ハーンそれぞれの実像を浮かび上がらせている。収 められている11篇は、早稲田大学オープンカレッジで開催された、「神々の国の首都・松江と小泉八雲」(2010年) 「『古事記』と小泉八雲から日本の原風景をたどる」(2012年)の二講座の中から選ばれたものである。
  『古事記』上巻・神代篇の三分の一を占める出雲神話とその舞台となった出雲地方。そして、『古事記』と出雲地方に特別な関心を寄せ、深い理解を 示し、『日本瞥見記』(通称『知られぬ日本の面影』)や『怪談』などの著作を遺した小泉八雲。この両者を各分野の専門家が角度を変え、各々ユニー クな視点で捉えたのが本書である。読み易く簡潔に、古事記・出雲・ハーンを捉えることができる著作集になっている。