『スミスの本棚-私の人生を変えたこの一冊-』

作成者
テレビ東京報道局ワールドビジネスサテライト
出版者
日経BP社
刊年
2011.9

  「本を読むのは嫌いだ」と心の底から叫びたい図書館員。今回コーナー執筆の担当となり、お薦め本を探し求め、図書館を歩き廻り書店をトボトボさまよ うと、素敵な本との出会いがありました。本書は、皆様ご存知の有名人が座右の書を紹介する一冊です。
  日々目まぐるしく変化する経済動向を報道する、ワールドビジネスサテライト。その中の「スミスの本棚」は社会人へ読書を薦める名物コーナーで、リレ ー形式でゲストがお薦めの一冊を紹介します。これが好評を博し、書籍化されました。本書には、映画監督の北野武、精神科医の名越康文、漫画家の西原理 恵子、元ソニー社長の出井伸之など日本の最前線で活躍する42人が登場し、各々が人生の転機となった本を取り上げ、印象に残る部分を抜粋。そこから学 び得た体験談と今後の展望が語られています。
  内容は「困難に挑む人へ」「発想のヒントが知りたい人へ」「夢を追いかける人へ」「人生の転機にのぞむ人へ」「身近な人の幸せを大切にする人へ」 「心を見つめたい人へ」「希望を探している人へ」の7章で構成されています。私が感銘を受けたのは、臨済宗相国寺管主の有馬頼底が紹介する、千玄室著 『いい人ぶらずに生きてみよう』です。彼は特攻隊員として出撃を待ち続け、終戦後、自分だけ生き延びた事に罪悪感を持ち、禅の修業に出かけました。 「死ぬと分かっている場所に行かなくてはならない、死にたくなくても死ななくてはいけない、そういう現実を君たちはどう思う?」という問いかけは、仕 事に没頭し、競争社会に疲れ果てる我々を原点回帰させるメッセージとも言えます。
  番組とコーナーに出演された方々は、「被災地に本を届けようプロジェクト」を立ち上げ、宮城県南三陸町へ20箱近くの本を寄贈しました。収録する話 は魅力的なものばかりですので、本書をきっかけとして、無限に拡がる読書の世界へ分け入ってください。